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あけましておめでとうございます。

このエントリは、2016年最初の記事として、このような新年のあいさつからはじめようと思って、正月明けぐらいに記事のほぼ全文を用意してたんですが、先日突発的に「月の繭」に関する記事を書いてしまいました。

「MOON」から「月の繭」へ 菅野よう子から井荻麟へ <『∀ガンダム』が第1話から最終回までに獲得したもの>

これが書けたことは幸いでしたが、その代わり、順番が入れ違いになってしまいました。
一応、挨拶の機会もないですし、冒頭のあけおめ残しておいたけど、さすがにもう違和感がすごい。

さて、この記事は当ブログ1年間の記事を紹介する、毎年恒例のまとめ2015年版です。
これまで忙しい年末にがんばって公開していましたが、昨年2014年版はさぼって年明けに公開したところ、「アラ、いいですね」の波が何度も押し寄せて来てしまい、今年も年明けということになってしまいました。

2015年に書いた記事数は、11本。
久しぶりに二桁いった気がしますが、かといってセレクトするような数でもないので、全て紹介します。
記事数は少ないですが、熟練の職人が心を込めて、ひとつひとつ手作りしております。
柔らかな口当たりと、ほのかな甘味をお楽しみください。




2015年唯一の富野アニメ関連記事


当ブログは特に専門的なテーマのない雑多なブログですが、メインコンテンツは富野由悠季監督のアニメーション作品に関する記事になるでしょうか。
ところが振り返ってみたら、2015年は1つしか記事書いてない!

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ベルリの前に広がる日本海に『キングゲイナー2』を幻視する <グレートメカニックG「富野由悠季 G-レコを語る」1万字インタビューより>

『Gレコ』放送終了後の富野監督インタビューを元にした記事。
結構アクセスとブックマークを頂きましたが、私の記事が、というより、富野監督の発言に注目が集まった感じでしょうね。
ただ、私はこれを書きながら、いくつか宿題というか、課題のようなものに気づかされたように感じました。(まあ、それを素直に書くかどうかは別問題なんですけれど)

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『Gレコ』は、この後、総集編劇場版が進行中であると聞きます。
このインタビューで登場したポイントがどうなっているのか期待したいですね。

マンガ版『機動警察パトレイバー』を読みなおそう!


2015年は、マンガ版『機動警察パトレイバー』を15年ぶりぐらいに読み直し、そして記事を書き始めた年、ということになるでしょう。


もともとシリーズ記事どころか、ブログにするつもりすらなく、きっかけは『パトレイバー』についてのツイートでした。起点はこれ。


その後、psb1981( @takepon1979 )さんと長い雑談になり、色々と興味深いトピックが生まれてきたので、「アラ、いいですね」の波が何度も押し寄せてきて、これはブログにでもまとめないと、もったいないなという誘惑に負けてしまいました。

記事の一覧


第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>

第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>

第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>

第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>

第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>

以上の5記事を書きましたが、シリーズは終わっていませんので、2016年も引き続き『パトレイバー』記事は書きます。

順番的には、このあと「後藤喜一」について書かなくてはならないのですが、彼については優れた言説がネット上にすでに数多くあります。ですからその存在を踏まえた上で、少しひねった形で書く必要があるかな、と考えてはいます。

ただ、ツイートで全て吐き出した時点で、自分の中で一旦終わってるので、再度モチベーションを上げ直して、ひとつの記事にまとめる、というのはそれなりにしんどかったりします。

とはいえ、自分でも満足している熊耳さんの記事などは、改めて考え直すことで到達できたので、やっぱり必要な過程ではあるんですよね……。『パトレイバー』のことを考えるだけで、口座にお金が振り込まれる世界へ行きたい。そんなバビロンを目指すプロジェクトは2016年も続きます。ああ、約束の土地へ、どうぞ導いて。

『機動警察パトレイバー』記事が一覧できる目次ページも作りましたので、宜しければご覧ください。

【目次】『機動警察パトレイバー』記事インデックス

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細田守監督作品『バケモノの子』


映画『バケモノの子』は、2015年7月に公開された細田守監督の最新作。

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この作品についても全く記事を書く予定ではなかったのに、結果的に3本も書いてしまいました。
映画自体は、公開後まもなく劇場で見て、感想ツイートを少しして、psb1981( @takepon1979 )さんと色々雑談して、で終わるはずでした。

それから3ヶ月ほどのち、10月に入って坂井哲也(@sakaitetsu )さんが『バケモノの子』をご覧になって、あれこれとお話をしました。


こうしてTwitter上で面白い話が色々と集まってしまったため、「アラ、いいですね」の波がまた何度も押し寄せてきて、これはブログにまとめないともったいないな、の精神により、以下の3本の記事を書く結果を招いてしまいました。

子育て西遊記 in ケモ街diary <映画『バケモノの子』と中島敦『わが西遊記』>

これは作品のモチーフのひとつ、中島敦『わが西遊記』から見る、子育て西遊記としての『バケモノの子』のおはなし。
それは私が昔から見たかったものでした。

東京都渋谷区「刀乱舞る -とらぶる- ダークネス」事件<映画『バケモノの子』の「父子」と「普通」について>

こちらは、がっつり長文感想。でも映画のレビューじゃないですね。
細田映画の風物詩「モヤモヤ」を中心に、鑑賞後に物語について色々考えたことをメモしたもので、いわば思考のはらわたのようなものです。
作品についてのツッコミも色々しています。
特に大きいのは、記事タイトルにあるとおり、「父と子」の戦いと、「普通」ってなに?という2つでしょうか。

『バケモノの子』の不正な.zipを解凍して見えてくるもの <映画『バケモノの子』と子供の危機にいない父>

前記事とは全く逆に「親子げんかもせず、熊徹と九太が一体化する」という展開は、この映画にとって正しいものであった、というスタンスで、作品を考えていきます。
そこで注目されるのが、この作品に登場する、もうひとりの父親。

この3本目の記事は、個人的には、2015年に書いた中では熊耳さん記事と並んで、よく書けたかな、と自信を持っています。
時期ハズレなこともあって、全く注目されませんでしたけどね。
そもそも『バケモノの子』自体が、50憶以上のヒット作のわりには、これまでのような賛否両論の議論が起きていないというか、話題力があまり無いんですよね。荒れてないといいますか。
でも、モヤモヤ成分はこれまでと同じくらい含まれていると思うんですけどね。

細田映画は金曜ロードショーでリピートされるようになってからが本番ですので、そこに期待したいなあ。



『FURY(フューリー)』はいいぞ!


えーと、最後は劇場版『ガールズ&パンツァー』の記事ですね。



あ、失敬失敬。実写版『ブラピ&パンツァー』の方でした。
やけに、西住殿に『ファイトクラブ』感があるなあ、『セブン』デイズ・ウォーダディだなあ、と思ったら、ブラッド・ピッドでござった。

FURYYYYY!! おまえは今まで殺したドイツ人の数を覚えているのか <映画『フューリー』でのブラピ&パンツァー>

劇場版『ガルパン』のちょうど1年前ぐらいに見てる映画なんですね。
動くモノホンティーガーが見れる映画でしたが、戦車とか全然分からない私にはその価値は分かりませんでしたが、映画としてバケモノとして描かれていたことは分かりましたよ。

番外編:


西島秀俊さんのCMでおなじみ、インスタントラーメンの日清ラ王。

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この日清ラ王のCMについて、色々気になることをいじったりしながら、インスタントラーメンのCMにおける「誰がラーメン作るのか?」問題を考えていきます。

「まるで、生めん。」は誰がために <日清ラ王TVCMの“ラーメン誰がつくる”問題>

Wordpressで作ったサブブログの記事なので番外としました。
しかも、ブログ全体としてはまだ色々といじってる途中なので、不完全な状態なんですが、記事書いちゃったので。

サブブログは単に、サーバー借りて、Wordpress入れて、色々いじってみよう、という遊びをするためだけのものなので、器が目的で、内容とか一切考えてませんでした。

FC2ブログの方が、アニメなどの長文ネタで固まってきてるので、それ以外のことを書く場にすればいいかな、とは思ってるんですが。
で、Twitterでツイートした短いネタなんかを、リサイクルすればいいしと思って、ラーメンネタの記事を書いたんですが、結局、長文になりましたね。これはもう病気やね。

何とか短くてどうでもいいネタを書いていきたいと思いますので、サブブログも宜しくお願い致します。

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2015年の記事は以上です。
予定にまったく無かった記事を、多く書くことになってしまった1年だったな、という印象です。

Twitterでの話が面白くて「アラ、いいですね」の波が何度押し寄せても、私は絶対に屈したりはしない!

記事を書くことになっちゃったよ……。

といった即堕ち2コマの繰り返しというか。
ただでさえ記事を量産できないのに、自分で自分の首を締めたとしか言いようがありません。笑うがいい。このような痴態をさらした私の姿を。

Twitterは元々、アウトプットが苦手な自分のためのメモやブログの元ネタづくりとして始めたので、意図通りともいえるんですが、記事にするときにはゼロから書き直すので、手間はそう変わらないんですよね。

この記事を書いている今現在だと『ガールズ&パンツァー』のツイートが多いので、あれを仕立て直せば、何本か記事が出来ると思いますが、再構成の手間というか、それをする過程でもう一段面白くなる確信がないと、どうしても二の足を踏みますね。
そうじゃないと、ただの清書というか、繰り返しの作業のようになってしまいますから。

全ては言い訳……だがな少年。やらない言い訳ばかりを思いつく、それが大人というやつなんだよ。

そうは言いつつも新年ですから、ここは前向きに、2016年というか将来の目標的なことを書きましょう。
  • いつか『パトレイバー』シリーズ記事を何とか完結させたい。
  • いつか台湾に旅行にいきたい。(行った事ない)
  • いつか北海道に旅行にいきたい。(行った事ない)
  • いつか同人誌に参加したい。(作りたいではないのが最低なポイント)

こういうの書いたことがないのですけど、最近私の友人が「結婚したいな……」と周りに言ってたら結婚することになった、と報告してきたので、ははあこれやな。この欲望に対する正直さと率直さが、幸運を呼び込むんや。ドリームがカムしてトゥルーになるんや。決戦イズフライデーなんや。と、感じたので、珍しく書いてみました。

台湾と北海道は行った事ないので純粋に旅行として行きたいのと、この場所ならブログを通じてのお知り合いにお会いできそうなので。
北海道行った時は、ぜひ『波よ聞いてくれ』聖地巡礼ということで、スープカレー食べに行って「おい、ルーがしゃばしゃばじゃねえか。ルーがしゃばしゃばだから店長呼んで来い。いやだからルーがしゃばしゃばで」みたいな、今どきそれ言う?みたいな感じで、初めてスープカレー食べた昭和世代ごっこしたいと思います。(ちなみにスープカレー何度も食べたことあります)

同人誌は、ブログとは違う面白さがあると思うので1度くらい体験してみたいなと思うのですが、「行動なき意思団」と呼ばれるほどの持ち前の行動力のなさと、社交性の低さで、実現に至っていません。というか実現に至ろうと行動したことがないです。

なんていうか、すべて「いつか」という、具体性のない未来へ丸投げしてる感じが何ともいえないですね。

いつか、いつか、いつか。
かなえたいと。きっとかなえたいと……。

私も、ソーメンマンさんの息子が、眠るシューマイを見守るような優しい目で、この世のあらゆるものを見つめていきたいと思っております。今年もよろしく!(すがしい顔で)



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ゆうきまさみ著、マンガ版『機動警察パトレイバー』についての複数の文章を書く、というシリーズ企画の目次ページです。


この企画は、Twitterでのマンガ版『機動警察パトレイバー』語りがベースになっています。
執筆者は現在のところ、以下の2名です。

執筆者: psb1981さん@takepon1979
ブログ: カテジナ日記http://tentative-psb1981.hatenablog.com/

執筆者: highlandview@highland_view
ブログ: HIGHLAND VIEW 【ハイランドビュー】http://highlandview.blog17.fc2.com/

「泉野明」「企画七課」「イングラム」など、作品キーワードに対して文章を書き連ねていき、その集合によって、マンガ版『機動警察パトレイバー』とは何かについて語れたら良いな、と思っています。

以下の目次では「キャラクター」「組織」などのキーワードジャンルで、記事を分類しています。
記事を書いた順番とは異なりますが、どの記事から読んで頂いても、取り上げたキーワードに関しては問題ないはずです。
興味のあるところから、お読み頂いても結構ですので、お好きにご覧ください。

1.基本設定


時代背景・基本設定


パトレイバーの時代背景(カテジナ日記)

1988年に生まれた、1998年の物語<時代背景>(HIGHLAND VIEW)

2.警視庁


警視庁 特車二課


第二小隊


特車二課 第二小隊 ~バブルからの疎外~(カテジナ日記)
泉 野明(いずみ のあ)

泉野明 ~少年少女~(カテジナ日記)
篠原 遊馬(しのはら あすま)

篠原遊馬 ~ロボットに乗れない男の子~(カテジナ日記)
太田 功(おおた いさお)

太田功 ~暴走する正義の男~(カテジナ日記)

悪・即・弾 その男、凶暴につき<太田 功>(HIGHLAND VIEW)
進士 幹泰(しんし みきやす)

進士幹泰 ~家庭人~(カテジナ日記)

MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<進士 幹泰>(HIGHLAND VIEW)
山崎 ひろみ(やまざき ひろみ)

山崎ひろみ ~元祖草食系男子~(カテジナ日記)

コワモテの優しい巨人<山崎 ひろみ>(HIGHLAND VIEW)
熊耳 武緒(くまがみ たけお)

熊耳武緒 ~パイロットのパイロット~(カテジナ日記)

第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<熊耳 武緒>(HIGHLAND VIEW)
香貫花・クランシー(かぬか・クランシー)

香貫花・クランシー ~女・太田功~(カテジナ日記)
後藤 喜一(ごとう きいち)

後藤喜一 ~学校の先生~(カテジナ日記)

第一小隊(南雲 しのぶ)


特車二課 第一小隊 ~女性が率いる部隊~(カテジナ日記)

整備班


榊清太郎 ~職人~(カテジナ日記)

3.汎用多足歩行型作業機械「レイバー」


レイバー(労働者)たち


パトレイバーの労働者たち ~3K労働~(カテジナ日記)

政治のレイバーと経済のレイバー(カテジナ日記)

篠原重工製レイバー


AV-98 イングラム ~父の力~(カテジナ日記)

イングラム不正入札疑惑 ~父との決別~(カテジナ日記)

AVS-98 イングラム・エコノミー ~正義の値段~(カテジナ日記)

シャフト製レイバー


ブロッケン ~政治のレイバー~(カテジナ日記)

Type-J9 グリフォン ~趣味のレイバー~(カテジナ日記)

4.立ち塞がるものたち


テロリスト


地球防衛軍 ~エコ左翼~(カテジナ日記)

シャフト・エンタープライズ


企画7課


企画七課 ~光画部~(カテジナ日記)
内海(うつみ)

内海課長 ~スキゾ・キッズ~(カテジナ日記)
黒崎(くろさき)

黒崎 ~企画七課のゴルゴ13~(カテジナ日記)
バドリナート・ハルチャンド(バド)

バドリナート・ハルチャンド ~非実在青少年~(カテジナ日記)

シャフト・セキュリティー・システム(SSS)


SSS(シャフト・セキュリティ・システム) ~悪の古典~(カテジナ日記)

東都生物工学研究所


廃棄物13号 (前) ~特撮の伝統~(カテジナ日記)

廃棄物13号 (後) ~暴走する父の力とイングラム~(カテジナ日記)

5.『機動警察パトレイバー』の物語とは


世界観・全体像


パトレイバーの世界観(カテジナ日記)

総論・まとめ


泉野明はRight Stuffだったのか? ~パトレイバーの正義~(カテジナ日記)

篠原遊馬の挫折 ~そして久世駿平へ~ - カテジナ日記(カテジナ日記)

赤ちゃんロボットとしてのイングラム ~パイロットはお母さん~(カテジナ日記)

ゆうきまさみは何に挑んだか ~顔のない父~(カテジナ日記)




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目次を見渡して、「ほとんどカテジナ日記じゃないか」というお気持ち、全くそのとおりです。

これは、psb1981さんが30以上の記事を書いているにも関わらず、私が5本(2015/11現在)しか書いていないという非対称性からくるものですが、最終的には同じぐらいの分量になるはず……いや、なります。

どうかバビロンプロジェクトの工期のような気持ちで見守って頂ければ幸いと存じます。
リチャードには勝てなかったよ……。


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そんな熊耳 武緒(くまがみ たけお)は、特車二課の学級委員。
このシリーズ定番ですが、まずはWikipediaで基本プロフィールを参照しましょう。

警視庁警備部特科車両二課第二小隊員。二号機バックアップ(指揮担当)(→一号機バックアップ(漫画版))。階級は巡査部長。兵庫県西宮市出身。通称お武さん(おたけさん)。

漫画版では2巻で初登場、進士に代わって二号機バックアップを務めることになった(この事情は漫画版あらすじ参照)。操縦技術に関しては隊内でも1、2を争うほどだが、指揮やバックアップ要員に向かずそもそもフォワードをやる以外に使い道がない太田の存在により、指揮担当となる。

テレビアニメ版では帰国した香貫花の後任として、第26話で初登場。ゆうきまさみによると本来第二小隊の重石になるはずだった香貫花の代わりに急遽用意したキャラで、詳しい設定が固まらない内に登場することになったという。

文武両道に秀でた才媛で、自分にも他人にも厳しく律する性格の持ち主である。漫画版では、傍若無人な太田が恐れて敬語で接する唯一の同僚で、他のシリーズでもその面が強調されることが多い。後藤の期待を汲む形で自身を「学級委員」と位置付け、第二小隊の面々をまとめる副隊長的な存在。ただし、普段はわりと気さくに接しており、まとめ役としての気配りも行き届いている。事実上、後藤の右腕で彼女に丸投げされている業務(データ解析、訓練計画の策定など)も多い。

中国返還前の香港警察への派遣時代、シャフトエンタープライズのリチャード・王(=内海)とは、ただならぬ関係にあった。

Wikipedia:「熊耳 武緒」より


まず有権者の皆様に分かって頂きたいのは、太田功はフォワード(パイロット)をやるしかない、ということ。このあたり、太田はやはりジャンプやマガジンの主人公体質なところがありますね。

問題は進士によるコントロールが全く効かないことで、かくして太田を抑え込めるキャラクターとして熊耳が登場しました。

階級も太田より上ですが、それに加えて登場時でのイングラム同士の格闘戦でも、生身の柔道でも負けた太田はおとなしく熊耳に従うことになります。ケンカ番長的ルールに従うところも太田のジャンプ・マガジンキャラっぽいところですね。

太田を抑えられる熊耳が揃ったことで、第二小隊は人材配置の上ではチームとして完成しました。
ですが基本的に第二小隊は常に人間関係が不安定であり、熊耳もそれと無関係ではありません。

彼女が実質的には副隊長のような仕事をしながら、担任の後藤先生をサポートする「副担任」ではなく、「学級委員」であるのは、問題を持つ未完成なクラスメイト(学生側)のひとりだからなんでしょう。

スキがなく、替えの効かない重要なプレーヤー


そんな熊耳さんなんですが、基本的には役割(立ち位置)としてのキャラクターの面が大きく、内面的な役割を担当するために生まれたキャラクターではないと思っています。

これは役割重視のキャラは、内面的なキャラより劣る/深みがない、ということでは全くありません。
特にこの作品がある種の「チーム物」である以上、キャラクターごとに分担する役割こそが最も重要とも言えます。

その役割(立ち位置)論でいえば「太田を抑えられるキャラクター」というのは、物語上、絶対必要なキャラクターです。それが出来るのは第二小隊6人の中では熊耳だけであり、替えの効かない重要なプレーヤーだと思います。

また、男性(遊馬)指揮による女性フォワード(野明)と、女性(熊耳)指揮による男性フォワード(太田)というコンビ対比的にも必要でした。
これはのちに、男性コンビ(遊馬&太田)と、女性コンビ(熊耳&野明)の対比も見せます。

文武両道に秀でた才女で美人。自分にも他人にも厳しく律することができ、「学級委員」の役割を自覚して動けるキャラクター。

スキのない、完璧なポジショニングですね。

人には誰しもあるもので


では「欠点」をつくりましょう、というのがキャラクター造形上の当然の流れ。

香港時代は「切れたナイフ」と恐れられた、我らが熊耳武緒巡査部長にも、欠点はいくつかございます。
  • オカルトが大の苦手
  • 香港時代のアレ(欠点というかトラウマ)

また、生まれ育ちに加え、大人になってからの香港のアレも大きな影響を及ぼしてそうな性格的な問題として、以下のようなものもあります。
  • 悩みを貯めこむ自爆型(野明の予想による)
  • 破滅型の行動(内海の指摘による)

「オカルトが苦手」というのは、もうこれは、ドラえもんがネズミが苦手のようなもので……もしかして、佐倉 魔美(エスパー魔美)の「幽霊が苦手」から来ているとか?

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これは要するに完璧に見えるキャラに、人間味あふれる、かわいらしい弱点をひとつ付けておく、といったものでしょう。そういえば、絵心が足りない、というものもあったな。それも同類ですね。

かわいらしいこれらとは異なる弱点が、彼女の大きな傷となっている「香港のアレ」です。

今夜はお前とビクトリアピーク


基本的にポジションキャラである熊耳さんは、立ち位置と他のキャラクターとの関係性で語るべきなんだろうとは思います。
ただ「対太田」「学級委員」ではそれこそ役割面での意味が大きく、熊耳自身のパーソナリティというよりは物語構造的な視点になってしまうでしょう。

となれば、彼女に迫るには、やはり「リチャード・王(ウォン)」しかない。

中国返還前の香港警察への派遣時代、シャフトエンタープライズのリチャード・王(=内海)とは、ただならぬ関係にあった。


これがいわゆる「香港時代のアレ」。
当時の熊耳とリチャード・王(ウォン)は、男女の関係にありました。
ビクトリアピークで夜景を見たあと、リチャードの下でウォンウォンと声を上げていたわけです(最低)。

しかしリチャードの正体を知らない熊耳は、結果的に利用され、香港からの逃亡を許してしまう。
内海は単に利用するための道具だけでなく、女性としての熊耳自身にも魅力を感じていたんでしょうが、そこはそれ。利用できるものは立った親どころか上司やテロリストでも利用するのが内海。

肝心な当時の2人の関係については、再会時の描写でニュアンスは伝わるが、直接的なものは熊耳によるわずかな回想シーンしかありません。

それは「優秀な仕事をする女性が、笑顔が印象的な男にコロッとだまされた」という、よくある感じのわずか6ページのダイジェスト風回想。

色々と考えるには情報は足りない……。
しかし足りないのは「そこに深いものが隠されている」のではなく、物語進行上あれで十分なのだと思った方がよいと思います。

だから描かれなかったところをあれこれ想像し、レッテルを貼ったりするのは筋が悪い。
むしろあのダイジェスト回想程度で「すべて(必要十分)」と考えた方がいい。

それにそもそも、あの回想シーンは熊耳によるものですが、彼女が見たのはあくまでも「リチャード・王」という一面でしかなく、内海と呼ばれる人間の全体像ではありません。
だまされた香港当時も、そして呼び出されて捕まった時も、内海は彼女の理解の外にある。

内海たくらみブラが送られ恥ずかし乙女


そうなると、お固いクラス委員長が、チャラいメガネに骨抜きにされたり、「くっ、殺せ」とにらみつける男勝りの強い女騎士があんなことになったりするような、太田より強いのにリチャード・王にはコロッとやられるみたいな話をするしかないのだろうか、と最初は思いました。

ただ、それをすると恐らく「女性とは」「男と女の関係とは」のようにビッグ主語で、(情報のディティールが無いから)一般化させた曖昧な話をすることになるでしょう。

それは全く気が進まないし、フィクションのキャラクターを利用して「女性」や「男女関係」を語るほど、私は経験も見識も持ち合わせていない。(そういうのは羅将ハン的な人にお任せします)

ですから熊耳&内海問題に関しては、視点を変えて、「なぜ物語の終盤から最後まで、熊耳は内海の隣にいたのか」という問題設定で考えてみようか、と思います。

これだけですとまだ「いやおタケさんも女だからさ」「女心っていうのはさ」みたいな勘違いを生む可能性がありますね。
また作中で、黒崎くんは「ギリギリまで背後関係を調べるつもりだろう」と言っていましたが、これは彼の推測でしかないし、私はどちらかといえば熊耳の動機より、物語的な機能に興味がある。

より正確にいえば「熊耳を物語最後まで、第二小隊メンバーではなく、内海側に置くことで、得られる物語とは何なのか」という感じでしょうか。

ポイントとしては以下のあたりになるでしょう。
  • なぜ熊耳を内海に捕らえさせ、物語最後まで一緒に行動する物語展開にしたのか。
  • 企画七課vs第二小隊の最終決戦に第二小隊の仲間として何も関与していないのではないか。
  • 最終的に内海もジェイクが刺し、内海問題についても解決に関与できていないのではないか。

ここまで熊耳にポジションキャラとして役割(使い道)が大きいと書いてきましたが、内海による呼び出し以降は、「学級委員」「対太田決戦兵器」という彼女を構成する大きなポジションが喪失します。
これまでのキャラクター性の拠り所であったポジションを失い、ブラも失った熊耳武緒とは、そして彼女にとっての戦いとは何なのか。

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何も考えてない「愚かな女」の行動なのか?


あれこれ考える前に、熊耳と内海の再会後の流れについて整理しておきましょう。

再会と拒絶
(1)内海に呼び出され、倉庫で再会
(2)ホテルで香港時代の回想、そのあと内海を拒絶
(3)内海が後藤へ電話。熊耳とバドの交換を申し出るが、人質にしている証拠もないしで断る。
(4)眠らされた熊耳は、ブラジャー取られて、人質の証拠品として特車二課(後藤)の元へ送られる

二課襲撃と人質価値の消滅
(5)特車二課にブラジャーが届き、熊耳が囚われていることが確定。
(6)内海から後藤へ二度目の電話。福島課長が交換取引を拒絶。
(7)内海による特車二課襲撃。熊耳は、内海、黒崎らと同じ車内に。
(8)バドが内海のもとへ。これにより交換要員としての熊耳の価値はなくなる。(内海は海外逃亡に同行させるつもり)

グリフォンvsイングラム決着
(9)イングラムに野明を乗せてから、内海、二課から撤退を開始。
(10)内海と熊耳を乗せた車、グリフォンとイングラムの戦いを車載テレビで見ながら移動。
(11)車はトンネルに入り、電波状況によりテレビで戦いの様子が確認できなくなる。
(12)サロンバスに乗り換えて脱出。電波状況回復。グリフォンの敗北をここで確認。

海外脱出と内海の最期
(13)内海と熊耳を乗せたサロンバスは晴海へ。黒崎は熊耳を排除をしようとする(内海が止める)
(14)晴海客船ターミナルに到着。熊耳は変装させられ、海外へ連れて行かれそうになる。
(15)海外逃亡直前、熊耳は監視に気付かれぬよう、香貫花に自分の存在を伝える。
(16)内海、熊耳の目の前でジェイクに刺される。


呼び出されて以降は、内海に振り回され、感情を揺さぶられ、また駆け引きの道具としても利用されてしまっています。
そもそも熊耳も本気で抵抗したり、逃げ出したり、といった行動も見せていません。
(これについては作中で内海からの指摘があります)

このため、内海のエスコートにより、彼のとなりでおとなしくイングラムvsグリフォンの最終決戦を見届けることになります。

客観的に見れば、後藤や香貫花と連絡が取れなかったとはいえ、ノコノコと一人で出かけていって捕まり、囚われの身で何も出来ないまま、戦いの決着はついてしまいました、となります。

そうですね。例えばキャラクターを、物語中で戦力的に役に立ったかどうかだけで判断するようなタイプの方から言わせれば、「足を引っ張った」「無能」「仕事放棄」「恋愛脳」「ノーブラ・ジャックナイフ」みたいな批判を受けるのかも知れませんね。

私自身も連載当時、最後まで内海のそばにいたわりに、おタケさんの行動による大逆転とか、最後の最後でだまし返す(意趣返し)みたいなこともなく、不確定要素のジェイクで決着したことに、あまりすっきりとしていなかったような気がします。熊耳さんはいったい何のためにあのポジションに最後までいたんだろう。

そして連載終了から20年以上が経過した2015年。
このシリーズ記事を書くために、15年ぶりぐらいにマンガ版を読み返して、当時疑問だったことが少し分かったような気がしました。

熊耳さんが「第二小隊の学級委員」を捨ててでも、「内海のとなり」のポジションに移る意味はあったと。

グリフォンvsイングラムに重ねられたもの


そのひとつは、グリフォンvsイングラムの最終決戦。


熊耳さんが参加していないと言いましたが、この一騎打ち自体には、特車二課のメンバーは誰も参加できていません。

襲撃された二課棟に閉じ込められた後藤たち。(のちに解放)
福島課長を人質に取られて手を出せなくなり、無力化された太田の二号機。
指揮車で外にいた遊馬も捕まってしまい、完全にバドと野明、2機のレイバーだけでの戦いです。

これこそが警察署の襲撃という手段まで選んで、内海が望んだ最終決戦のかたちです。

しかしこの結果は、後藤の言う通り、泉野明の「圧勝」に終わります。
共に「趣味のレイバー」のパイロットに選ばれたバドと野明。結果の違いはレイバーに乗り始めてから得たものの違いが大きいですが、これは「泉野明」の項などで詳しく語りましょう。

内海の誤算はいくつかあるでしょうが、ひとつはこのパイロット泉野明の資質を見誤ったこと。
もうひとつは、泉野明を見誤ったことによって、バドと野明の違いを見誤ったこと。
そしてイングラムという機体とそれを支える力を見誤ったこと。

イングラムを、いつも最高の状態にしてくれている整備班の働き。
描写は少ないが、恐らくコンピューター系のサポートを色々してくれたであろう進士。
描写は少ないが、気配りやメンタル面も含めて、バックアップに徹してくれたであろう山崎。
1号機とは違う特徴を持ち、コンビとしてライバルとして、模擬戦の相手や反面教師にもなった太田。
口は悪いが、育ちもあってレイバーに詳しく、野明をのせるのが上手かった初代パートナー遊馬。
そして、二代目パートナーとして野明と一号機を育て上げてきた熊耳。
(さらにいえば、これらをキャスティングした後藤隊長)

イングラムの能力は、多くの公務員の手により、長年の運用の中で丹念に練り上げてきたもの。
そこに熊耳も1号機バックス(指揮)として、重要な役割で参加しています。

だから、グリフォンvsイングラムは、バドvs野明でもあり、それを支える企画七課全員vs特車二課全員であり、当然のことながら、内海vs熊耳の要素も含まれる。
内海と熊耳、2人がそれぞれ育てたパイロットとロボットの決戦。
それを熊耳は敵地で、内海のとなりで見届けることになる。これが彼女の戦いのひとつ。

なぜ最終決戦で、野明&遊馬コンビが復活しないのか


マンガ版全22巻のうち、野明と遊馬のコンビは実は1巻~13巻まで。
13巻途中からは、野明と熊耳のコンビとなり、それは物語の最後まで続きます。
ちなみに最終回では、熊耳の不在により、遊馬が1号機、2号機、両方の指揮を取っていますが、結局最後まで、野明&遊馬という1vs1の関係には戻っていません。

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『パトレイバー』といえば、野明&遊馬コンビというイメージがしますが、実はマンガ版では野明&熊耳コンビもかなり長いのです。

なぜなのか、と言えば、配置換え自体は遊馬の自業自得から生じたものです。
別に熊耳側に理由があったわけではない。ただ、マンガ版がグリフォンとの決着で終わらせたことを考えると、物語の後半から最後まで、熊耳が1号機のバックスであり続けたことは意味があったと思います。

連載当時、実は私は最終決戦のときに「ああ、この緊急時についに野明&遊馬コンビが復活するのか!」と思いながら読んでいました。

篠原重工の実験試作機AVR-0でのグリフォンとの前哨戦。衛星からの情報と管制車による演算処理でのサポートは、長年イングラムを手足にしてきた野明との相性が悪く、敗退します。
「うむ。最新技術の衛星サポートより、遊馬の指揮だな!」と思っていたら、遊馬も捕まり、結局、内海の思惑通り、野明ひとりでの最終決戦となってしまいました。

当時は、あれ?遊馬の見せ場は?コンビ復活は?とか思いましたが、今から思えばこれは正しい。
この段階でも正式な1号機バックスは熊耳武緒であって、彼女は内海とこの戦いを見つめている。
ここで遊馬が指揮を取ると、内海vs熊耳の構造がボケてしまう。

野明をたったひとりで戦わせることで逆に、不在の熊耳や、整備班含め特車二課全員を背負ったイングラムという構図が強調されていると考えます。

内海のとなりで、イングラムの勝利に笑い転げる女


これまでやられっぱなしだった熊耳が、内海を刺すための道具は、ジャックナイフではなく、イングラムによる電磁警棒。

それは、内海とバドのお遊びに公務員が仕事で決着をつけた瞬間でした。
そして大事なことは、この瞬間、内海のとなりにはそれを笑うことができる熊耳がいるのです。

もしこの敗北時に熊耳がいなければ、内海は(内心はともかく)部下たちの手前、余裕のある笑顔でニヤケたまま、軽口でもたたいて、ポジティブに次の行動でも指示したでしょう。
しかし、ただひとり。内海自身が連れてきた熊耳がここに存在することで、それは許されない。
熊耳は、可笑しくてたまらないと笑い転げます。

そもそも、その瞬間に内海のとなりにいることが出来るのは熊耳以外ありえないでしょう。
これは熊耳にしかできない、重要な役割です。多分この瞬間のために彼女はここにいた。

ただしそれには「第二小隊の学級委員」を捨てて、破滅型の愚かな女に見えても、内海のふところへ飛び込ませる必要があった。今はそう思います。

振り返らなくてもジェイクがいる


その後、内海は熊耳らを連れて、海外への逃亡をはかりますが、その寸前でジェイクによって刺されることで物語は終わります。

内海のとなりにいたことで、イングラムによる勝利を見届け、一矢報いた熊耳ですが、今度はかつて愛したであろう男の死をも見届けることになってしまいました。

殺害したジェイクは直後に黒崎によって銃で撃たれ、企画七課の面々は全て逃亡し、行方をくらましたようなので、現場のことを語れるのはおそらくは残された熊耳のみ。

警察による事情聴取や捜査協力なども行われたのではないかと推測されます。
事件の関係者で、警察官とはいえ、内海の死を語るその心中は如何ばかりかと思いますが、その過程で、彼女の中の内海、いやリチャード・王がゆっくりと死んでいったのかも知れません。

その後、休職をするほどにショックな出来事であったには間違いないですが、もし内海が再び熊耳を残して、生死不明で行方をくらましでもしたら、彼女のノドには骨が刺さったままになったでしょう。
オーストラリアで死んだよ、と噂を聞いても、それでは彼女はきっと信じない。

彼女が最後まで内海のとなりにいて、内海の死を目撃し、そしてその死を語ったであろうことは、彼女の中のリチャード・王を埋葬するために必要な儀式だったのかも知れません。

約束された熊耳武緒の帰還


内海というキャラクターの決着については、作者ゆうきまさみの倫理性と共に良く語られるところです。いわゆる光画部的なものへのケリという文脈で。

それと同時に、熊耳武緒という女性に対して、過去の決着と救済を与えているように感じました。
けして「第二小隊の学級委員」を捨て、破滅型の愚かな女に貶めたわけではなく、いわばポジションのためのキャラクターだった彼女に、「チーム物」としての役割を免じて、この後の人生(それは連載終了後で描かれることはない)を生きるためのチャンスを与えたようにも見えます。

それは彼女にとって非常に残酷なものでもあったのですが、時間は彼女の敵ではなく恐らく味方。
彼女がまもなく元気に復帰するであろうことを、最終回に初めて登場した、熊耳の父が教えてくれます。

この、熊耳が近い将来に復帰するであろうという予感が、マンガ版『機動警察パトレイバー』を閉じた世界にせず、連載終了後も続いていく未来があることを感じさせてくれて、私は好きです。
きっと、熊耳が笑顔で職場に戻り、多分そのときにはじめて、後藤隊長は遊馬を1号機専任バックスに戻して、コンビを復活させるのでは?などと勝手に考えたりしています。

それにしても、熊耳さんの父も柔らかそうな笑顔が印象的なメガネの男性でした。
彼女は、この笑顔の父に「面白いよ」と心霊写真などを見せられ、幽霊のトラウマをつくりました。
そのあと、同じように笑顔が印象的なリチャード・王に魅かれ、だまされ、トラウマをつくりました。

ただ父親と内海が違っていたのは、父親は裏表なく心から彼女を愛していたことです。
心霊写真も楽しいことを娘と共有しようと思ってやったこと。もちろん、だますつもりなど毛頭ありません。(でもガチ泣き)
内海も笑顔のまま、ぼくもタケオと喜びを共有したいだけなんだ、とは言うでしょうけどね。
まあ子供の戯言ですけど。

父の前では子供の頃から泣いたり、おびえたりしまくっていたであろう娘を、父は「簡単にへこたれたりしない娘だ」と力強く断言するんですよね。
だから熊耳さんは、彼女を裏表なく愛してくれている家族に支えられて、必ず戻ってくるでしょう。

そしていつの日か「学級委員」を再開した彼女は、メガネの奥に見える笑顔の違いを見抜ける女性になっているかも知れません。なっているといいですね。


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シリーズ記事『機動警察パトレイバー』


第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>
第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>
第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>
第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>
第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>


同時にこの企画を始めた(そして私が置いていかれた)psb1981さんのパトレイバー記事はこちら。

カテジナ日記 カテゴリ:パトレイバー

発端となったTwitterでの『パトレイバー』話のまとめはこちら。

『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
http://togetter.com/li/801061
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太田功は、野明と共に、第二小隊でイングラム二号機に搭乗する。
物語の中心たる第二小隊において、レイバーに乗って戦うことが出来る数少ない男子。
(この箇所、主語が大きかったので、記事の主眼に合わせて修正しました。唯一の男子、でもいいけれど)

基本プロフィールをいつものごとく、Wikipediaから参照しましょう。

警視庁警備部特科車両二課第二小隊員。二号機フォワード(操縦担当)。階級は巡査。岩手県釜石市出身。よく言えば生真面目で正義感の強い熱血漢、裏を返せば、直情径行で猪突猛進なだけの熱血馬鹿。規律重視で融通が利かない性格ゆえに、自分よりも階級や実力が上の相手にはわりと素直に従う一方、同僚隊員(特に遊馬)と衝突することが多いが、危機には勇んで駆けつけようとする仲間思いな心根にはブレがない。漫画版の初期では、特車2課の隊員の中で唯一「正規の教育を受けた警察官」であるという自負からか、いわゆる「予備校出身の即席警官」である他の隊員を、少々見下しているようなフシがあった。
Wikipedia:「太田功」より


体育会系熱血バカではあるが、正義感が強く、それでいて意外とフェミニストでもある。
古き良きロボットアニメであれば、太田が物語の主人公であってもおかしくはない。
別の言い方をすれば、週刊少年サンデーではなく、ジャンプかマガジンに連載していたら、太田が主人公だったかも知れない。

しかし『機動警察パトレイバー』の主人公は、女性主人公・泉野明、男性主人公・篠原遊馬の2人。
太田ではなく、この2人が主人公になるところがこの作品らしい所であり、巧みなところです。

遊馬がレイバーには乗らず(乗れず)、太田がレイバーに乗って戦えるのは、端的に言って太田が「バカ」だからだと私は思います。

「バカ」ゆえの純粋性と幼児性


「バカ」と言っても、知能指数が劣るわけではありません。
体制側のロボットに乗り、正義の名のもとに、その力を振るうことに屈託があるかないかです。
さらにいえば、冗談のような趣味デザインのパトカーロボットに乗って、ロボットアニメの主人公として正義を執行することを、引き受ける覚悟があるかどうか。(そして、それが恥ずかしくないか)

遊馬はお利口さんなので、そのポジションには立ちません。
もちろん、篠原重工(父)の作ったレイバーだということも拒む理由のひとつでしょうが、そもそもそういったややこしい背景が太田には無いのです。

国家のロボットに乗り、正義の名のもとに、悪党を征伐する。できれば銃で。
太田がレイバーに乗る理由はこれです。シンプル。

かくして、悪・即・弾の太田と、イングラム大好きっ子の野明の「バカ」2人が第二小隊のフォワードになりました。

遊馬、進士、山崎の男子3名は、適性以前に考えることが多く、「バカ」ではないので、レイバーには乗れないでしょう。

自分のやりたいことをやりたいように行動する、それができる「バカ」であることは第二小隊のフォワードであるための「RIGHT STUFF(正しい資質)」なのです。

国家をバックにした太田の暴力


体制側で力をふるうことにためらいのない太田は、やたらに銃を撃ちたがり、暴走を続けます。
彼の正義は「バカ」であるがゆえの行動力と共に、純粋性と幼児性に満ちています。

この幼児的な正義には「しつけ」が必要ですが、進士は太田を全く止められません。
太田と同じ男性である進士が止めるには、太田以上の「力」が必要だったでしょう。
恐らくそれ以外に屈服させる方法はありません。

そこで二号機の指揮は熊耳武緒が担当することになりました。
熊耳は実力的にも太田より上なのですが、それも含めて、子供をしつけるお母さんですね。
実力の問題だけではなく、恐らく原理的に、太田は熊耳に勝てないはずです。

今回のパトレイバー企画を一緒に始めたものの、圧倒的に先行しているpsb1981さんは太田について、こう書いていらっしゃいます。

この彼の存在はパトレイバーという作品のテーマの一つを浮かび上がらせるのではないだろうか。それは太田じゃない人間は、どのようにすればレイバー(ロボット)に乗って、正義を執行できるのか、であり、また太田の正義はどのように担保されるのか、だ。

後者の疑問については作者がすぐに答えを提示してくれる。それは太田を指揮するのが熊耳武雄(女性)だということだ。つまり正義(の暴力)を振るう男性を女性がコントロールしているのである。

太田功(カテジナ日記)
http://tentative-psb1981.hatenablog.com/entry/2015/04/04/201258


男の子がロボットに乗ることで社会に関わるというロボットアニメのモデルを考える上で、この太田&熊耳コンビと、役割と性別が逆転している遊馬&野明コンビは良いサンプルになってくれそうです。

全員に対して逆位置で関われるキャラクター


この他に個人的に、太田を面白いと思うのは、第二小隊メンバー全員に対して逆位置に立てるところです。

泉野明に対して
技の1号と力の2号。女性的な1号機に対しての男性的な2号機として。

篠原遊馬に対して
ひねくれて冷めた若者である遊馬に対しての、直情・熱血のケンカ相手として。
文化系キャラと体育会系キャラの対立。

進士幹康に対して
気弱な知性派メガネキャラクターに対しての、強気の肉体派太眉キャラクター。

山崎ひろみに対して
温和で平和主義のひろみちゃんに対しての、好戦的なキャラクター。
レイアウト上、巨体と低い身長の視覚的コントラスト。

熊耳武緒に対して
学級委員に対しての、ガキ大将的なキャラクター。
(ただし熊耳が格上を証明したため、強い者に従う番長ルールで素直に従う)

コンビという意味では、男性が指揮することで女性パイロットに力を仮託するコンピ(野明&遊馬)に対しての、男がロボットで暴力をふるうのを女性が制御するコンビという対比。


このように全てのキャラクターに対して逆位置に立てるのは、太田功だけ。

こう見ると本当に主人公タイプだな、と思いますが、本作で脇役の太田は、他のキャラクターの個性を引き立てるのにかなり貢献しているはずです。

太田がいなければ、第二小隊キャラクター相関図は線の数が少なく、また線が弱々しいものになっていたでしょうね。作品にとって重要なキャラクターです。

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シリーズ記事『機動警察パトレイバー』


第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>
第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>
第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>
第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>
第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>


同時にこの企画を始めた(そして私が置いていかれた)psb1981さんのパトレイバー記事はこちら。

カテジナ日記 カテゴリ:パトレイバー

発端となったTwitterでの『パトレイバー』話のまとめはこちら。

『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
http://togetter.com/li/801061
高いビルから飛び降りたら、あなたは死にますか?
そりゃあ死にますよね。だってにんげんだもの(みつを)。


ではアニメやマンガの住人はどうでしょう?
現実と同じく死んでしまうお話もあれば、地面に人型に穴があいてギャグになって終わり、というのもありますね。
その違いって一体なんなの?

というようなお話。



こういった作品ごとに違うリアリティに対して、押井守は、
「作品のリアリティは、監督によってコントロールされるべきものだ」
とインタビューで話しておりました。
(出典はアニメスタイル2号の押井守インタビューですが、部屋のどこにあるのか見つからないので大意です)

ここでのリアリティとは、出てくるキャラクターや背景が写実的なのか、という画だけの問題でなく、演出などを含めた作品全体で表現されるリアリティをさします。
つまり高いビルから飛び降りたときに、キャラクターが死んでしまう作品なのか、ギャグで済む作品なのかは、監督がコントロールするものであるということですね。

押井守はインタビュー中で、自身が監督した「機動警察パトレイバー」を例に出していました。

例えば、2階からパトレイバーのキャラクターが飛び降りたとする。
その時に下に池があり水しぶきがあがるだけで<ケガをしない>のか。
それとも<ケガはするが次のシーンですっかり直る>のか。
それとも<現実どおりのケガをする>のか。

パトレイバーは展開されたメディアによってリアリティのレベルが微妙に違うものとしてコントロールされている、と。

ちなみにマンガとアニメのパトレイバーだと<ケガはするが次のシーンですっかり直る>ぐらいのリアリティかな?
<現実どおりのケガをする>のは、劇場版パトレイバーのリアリティになるでしょうか。
<ケガをしない>のは、パトレイバーのコメディ回でもありえますが、まあ、うる星やつらですかね。

つまり太田さんが同じように暴れても、アニメやマンガではケガをするぐらいで済む(でも次の回には治っている)けれど、劇場版では死んでしまうかもしれないわけですね。

■作品世界を体現するために選ばれるキャラクター

このインタビューで面白いなあ、と思ったのは、押井守にとって、まず作品で表現したいリアリティレベルの設定ありきで、キャラクターデザインの絵柄は、そのために選ばれるものだということです。

先のパトレイバーでいうなら、劇場版は明らかにアニメ版とは違うリアリティでリデザインされているし、映画「攻殻機動隊」では、主人公草薙素子を肉感的なリアリティのあるキャラクターデザインとし、原作士郎正宗のものから大きく変えました。
それは全て、作品で表現したいリアリティをキャラクターに体現してもらうため。
ビルから飛び降り、格闘し、大口径の銃をぶっ放すサイボーグ軍人女性の首が細いわけはない、肩が張っていないわけはない。
だから原作の士郎正宗がデザインした首の細い(いわゆる)マンガ的なキャラクターを使わなかった。
つまり、作品の方向性、必要なリアリティと密接な関係がある以上、キャラクターデザインは単純な絵の好み、良し悪しだけでは選べないということ。
こういう考えの元では、結果的にキャラクターデザインと作品世界のリアリティが一致し、「ずれ」は生じない。

そんな押井守監督作品では「うる星やつら」の諸星あたるも「攻殻機動隊」の草薙素子も、高い所から飛び降りても死なないキャラクターになっています。
しかし作品で設定されているリアリティが違うため、結果は同じでも理由は違う。
「うる星やつら」はそもそもキャラクターが死なない(ギャグで済む)リアリティレベルであるから。飛び降りても好きな子の名を叫べば夢から覚めて助かるような不思議SF世界といった方がいいでしょうか。
「攻殻機動隊」ではうる星と違い、キャラクターは死にます。トグサや荒巻ですら飛び降りたら死ぬでしょう。そんな世界で死なないために全身義体のサイボーグで、さらに頑強な肉体を持ったキャラクターにリデザインする必要があったわけです。
(無茶をするため道理を通すのが、リアリティの高い作品の制約であり、その言い訳の工夫こそが面白さとも言えるでしょうね)

制作側はまず表現したい世界ありき。そしてその世界の表現に適したキャラクターが選ばれる、という過程があるというのが面白いところです。
選ばれたキャラクターは作品世界を体現した存在ですので、デフォルメキャラ→ギャグ世界と、キャラクターを見ただけで世界を理解してもらえるようにしてるわけですね。
(この世界は物理法則や人体構造を無視してますよ、というメッセージですよね)
一方、視聴者は制作過程などすっ飛ばして作品をまず見ますから、リアルなキャラクターだからリアルな世界で、デフォルメキャラだからギャグ世界だと素直に感じるのですが、それはメッセージの受け取り方として間違ってないわけです。

ちなみに同インタビューでは、押井が、他のアニメ作品をさして、
「キャラクターと作品世界が一致していない作品が多すぎる」というようなことも言ってましたね。
具体的な作品名は一切あげていなかったけども、思い当たるフシは色々ある。
リアリティのないキャラクターでハードな生き死にバトルをしたり、萌え美少女たちがトラウマ博覧会して人生を語ったりするようなことを言ってるんじゃないかな。
私も未見のアニメ作品のキャラクターだけ見た後で、実際に作品を見て「え?中身はこんな話だったの?」と見かけとのギャップに驚いたことが何度もあったように思います。

さて、この「飛び降りてケガをするか、死ぬかどうか」というのは、あくまで「リアリティのコントロール」を説明するための例にすぎないのですが、この例を色々考えていくと面白いところにぶつかります。
なぜなら「飛び降りても絶対死なないアニメ」を作っている国民的アニメ監督がいるから。
もちろん宮崎さんちのハヤオ君のことです。

■飛び降りる宮崎駿

それは例えば宮崎アニメでよくあるこういうシーン。
高い塔やビルのてっぺんで、少年はとらわれの少女を助けるが敵に追い詰められる。逃げ場はない。
絶体絶命のピンチ。どうする?どうやってこの危機を乗り切る?

こんな時、宮崎アニメで少年はどうするか?………そう、正解は「勇気をもって飛び降りる」です。
少女をお姫様だっこして飛び降りる。飛び降り方は色々バリエーションあれど、とにかく飛び降りる。
少年は地面に着地し、体全体にしびれが走るが、両足をふんばり、少女と共に駆け出す。
まさに宮崎アニメだと毎度1回は必ずあるようなシーンですよね。特にコナン、カリ城、ラピュタが思い浮かびます。

でもこういった宮崎アニメの見せ場シーンも押井守に言わせるとこうなる。
「せっかく絶体絶命の危機のシーンを作ったのに、主人公の無茶で簡単に脱出されるんだったら脚本の意味が無いじゃないか」

↑これ、昔、何か古いアニメ評論の本で読んだ気がするのですが、手元にないので良く分かりません。(こういう場面でで「アニメであること」に逃げるからダメなんだ的なことも言ってたような気もします)

まあ、確かに飛び降りても大丈夫なようにあれこれ理屈をつけたり、夢世界にしたり、キャラクターすら変えた押井先生に対して、「我慢する」ですからねえ(笑)。

先ほどのリアリティコントロールの話と合わせて、2人の作家性の違いが見て取れて大変面白いですね。
私が感じるに、つまりこういうことじゃないかな。

宮崎駿

・絶体絶命のシーンをドキドキワクワクのダイナミックな動きで突破することこそアニメーションの楽しさと信じている。
・そうでなくて何がアニメーションなのか。飛び降りてケガをするキャラクターの物語は、リアルな肉体を持った実写でやればよい。
・無茶を通せば道理が引っ込むものだ。観客が「道理が引っ込んで当然」と思うほどの魅力的な動きを作ればよい。
・飛び降りた少年がケガするのはナンセンスで、ケガをするかどうかでなく、少女を守るために飛び降りる勇気があるか、少女の重さを歯を食いしばって耐えられるかどうか、そこが重要なところだ。それができる少年がケガするわけがない。


押井守

・絶対絶命のシーンは道理(脚本・構成レベル)でつくられる。ならばその解決も道理で行いたい。
・というか絶体絶命までの最悪のシナリオを登場人物たちが知恵を絞り、行動し、それを回避するような話が好き。(劇場版パト1なんか完全にそう)
・観客が危機回避を納得できるだけの理屈は必要なはずだ。そのためには、危機脱出のための伏線をはったり、駆け引きさせたり、言い訳をちゃんと作ろう。
・問題はその作品のリアリティレベルがどの程度か、ということだ。それに応じてシーンはつくられ、リアリティが守られる。
・最終的に飛び降りざるを得なくなったとしたら、飛び降りても助かる理屈を付けるし、その作品のリアリティレベルに応じてケガをさせるだろう。
・もしくは好きな子の名を叫べば夢から覚めればよい。夢の中ではリアリティは関係ないからどうとでもなる。
・夢から覚めた世界もまた夢の中でないとなぜ言い切れる?いや、まて。そもそもこの映画を見ている俺達の実存さえも疑わしい。いや、まて…(以下、永遠に続く)


乱暴にまとめれば「道理を壊して無茶を通す宮崎駿」「無茶をするため道理を通す押井守」といったところでしょうか。

この2人の違いは思想の違いもあるけれど、宮崎が絵を描くことができる監督であり、押井は絵を描くことができない監督であるという違いも大きく影響しているでしょうね。

宮崎駿の考え方こそアニメーションそのもの、とは言えると思います。ディズニーやトム&ジェリーなどにも通じる魅力ですね。
ただこれは宮崎駿本人が天才アニメーターであることで支えられている。ジブリ作品(紅の豚以降?)はしっかりした脚本がないそうで、脚本はアニメ作りながら作るし、アニメの都合でどんどん変えられていく。 (ジャッキー・チェンの映画の作り方と似ているなと思います)
究極的に言えば、自分だけでアニメが作れるから出来る方法です。

一方の押井守は絵が描けないので、当然絵は誰かに描いてもらうことになるわけです。
そうなると自分はそれを管理(コントロール)する側にならざるを得ない。
だから脚本、絵コンテ、画面構成を重視することになります。なぜなら、その部分さえしっかり握っていれば、誰が絵を描こうと、押井守の映画になるからです。
それらをさえてれば、自分の映画をれる=押井守。そうか、そこから来たネーミングか!(押井さんはキャラクターではありません)

私個人でいえば、絵心が無いことと、理詰めで理解しやすいことを考えると、押井守の考え方に感銘を覚えます。
(もちろん、宮崎駿「作品」は魅力的で大好きなのですが)

解決法の違いがそれぞれの監督の長所や魅力となっているので、どちらが正しいとかではなく、お互いが自分の信じる演出をするのが正しいのでしょうね。
それにしても対照的で面白いですね。

※余談
富野由悠季の場合
絶体絶命 → 二代目主役ロボが助けに来る。
これじゃないですかね。やっぱり。スポンサーの枠組みの中で最大限の仕事をしてきた人としては。ピンチは新商品が登場するためにこそ存在する!

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