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(2012/09/25)
ゆうきまさみ

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太田功は、野明と共に、第二小隊でイングラム二号機に搭乗する。
物語の中心たる第二小隊において、レイバーに乗って戦うことが出来る数少ない男子。
(この箇所、主語が大きかったので、記事の主眼に合わせて修正しました。唯一の男子、でもいいけれど)

基本プロフィールをいつものごとく、Wikipediaから参照しましょう。

警視庁警備部特科車両二課第二小隊員。二号機フォワード(操縦担当)。階級は巡査。岩手県釜石市出身。よく言えば生真面目で正義感の強い熱血漢、裏を返せば、直情径行で猪突猛進なだけの熱血馬鹿。規律重視で融通が利かない性格ゆえに、自分よりも階級や実力が上の相手にはわりと素直に従う一方、同僚隊員(特に遊馬)と衝突することが多いが、危機には勇んで駆けつけようとする仲間思いな心根にはブレがない。漫画版の初期では、特車2課の隊員の中で唯一「正規の教育を受けた警察官」であるという自負からか、いわゆる「予備校出身の即席警官」である他の隊員を、少々見下しているようなフシがあった。
Wikipedia:「太田功」より


体育会系熱血バカではあるが、正義感が強く、それでいて意外とフェミニストでもある。
古き良きロボットアニメであれば、太田が物語の主人公であってもおかしくはない。
別の言い方をすれば、週刊少年サンデーではなく、ジャンプかマガジンに連載していたら、太田が主人公だったかも知れない。

しかし『機動警察パトレイバー』の主人公は、女性主人公・泉野明、男性主人公・篠原遊馬の2人。
太田ではなく、この2人が主人公になるところがこの作品らしい所であり、巧みなところです。

遊馬がレイバーには乗らず(乗れず)、太田がレイバーに乗って戦えるのは、端的に言って太田が「バカ」だからだと私は思います。

「バカ」ゆえの純粋性と幼児性


「バカ」と言っても、知能指数が劣るわけではありません。
体制側のロボットに乗り、正義の名のもとに、その力を振るうことに屈託があるかないかです。
さらにいえば、冗談のような趣味デザインのパトカーロボットに乗って、ロボットアニメの主人公として正義を執行することを、引き受ける覚悟があるかどうか。(そして、それが恥ずかしくないか)

遊馬はお利口さんなので、そのポジションには立ちません。
もちろん、篠原重工(父)の作ったレイバーだということも拒む理由のひとつでしょうが、そもそもそういったややこしい背景が太田には無いのです。

国家のロボットに乗り、正義の名のもとに、悪党を征伐する。できれば銃で。
太田がレイバーに乗る理由はこれです。シンプル。

かくして、悪・即・弾の太田と、イングラム大好きっ子の野明の「バカ」2人が第二小隊のフォワードになりました。

遊馬、進士、山崎の男子3名は、適性以前に考えることが多く、「バカ」ではないので、レイバーには乗れないでしょう。

自分のやりたいことをやりたいように行動する、それができる「バカ」であることは第二小隊のフォワードであるための「RIGHT STUFF(正しい資質)」なのです。

国家をバックにした太田の暴力


体制側で力をふるうことにためらいのない太田は、やたらに銃を撃ちたがり、暴走を続けます。
彼の正義は「バカ」であるがゆえの行動力と共に、純粋性と幼児性に満ちています。

この幼児的な正義には「しつけ」が必要ですが、進士は太田を全く止められません。
太田と同じ男性である進士が止めるには、太田以上の「力」が必要だったでしょう。
恐らくそれ以外に屈服させる方法はありません。

そこで二号機の指揮は熊耳武緒が担当することになりました。
熊耳は実力的にも太田より上なのですが、それも含めて、子供をしつけるお母さんですね。
実力の問題だけではなく、恐らく原理的に、太田は熊耳に勝てないはずです。

今回のパトレイバー企画を一緒に始めたものの、圧倒的に先行しているpsb1981さんは太田について、こう書いていらっしゃいます。

この彼の存在はパトレイバーという作品のテーマの一つを浮かび上がらせるのではないだろうか。それは太田じゃない人間は、どのようにすればレイバー(ロボット)に乗って、正義を執行できるのか、であり、また太田の正義はどのように担保されるのか、だ。

後者の疑問については作者がすぐに答えを提示してくれる。それは太田を指揮するのが熊耳武雄(女性)だということだ。つまり正義(の暴力)を振るう男性を女性がコントロールしているのである。

太田功(カテジナ日記)
http://tentative-psb1981.hatenablog.com/entry/2015/04/04/201258


男の子がロボットに乗ることで社会に関わるというロボットアニメのモデルを考える上で、この太田&熊耳コンビと、役割と性別が逆転している遊馬&野明コンビは良いサンプルになってくれそうです。

全員に対して逆位置で関われるキャラクター


この他に個人的に、太田を面白いと思うのは、第二小隊メンバー全員に対して逆位置に立てるところです。

泉野明に対して
技の1号と力の2号。女性的な1号機に対しての男性的な2号機として。

篠原遊馬に対して
ひねくれて冷めた若者である遊馬に対しての、直情・熱血のケンカ相手として。
文化系キャラと体育会系キャラの対立。

進士幹康に対して
気弱な知性派メガネキャラクターに対しての、強気の肉体派太眉キャラクター。

山崎ひろみに対して
温和で平和主義のひろみちゃんに対しての、好戦的なキャラクター。
レイアウト上、巨体と低い身長の視覚的コントラスト。

熊耳武緒に対して
学級委員に対しての、ガキ大将的なキャラクター。
(ただし熊耳が格上を証明したため、強い者に従う番長ルールで素直に従う)

コンビという意味では、男性が指揮することで女性パイロットに力を仮託するコンピ(野明&遊馬)に対しての、男がロボットで暴力をふるうのを女性が制御するコンビという対比。


このように全てのキャラクターに対して逆位置に立てるのは、太田功だけ。

こう見ると本当に主人公タイプだな、と思いますが、本作で脇役の太田は、他のキャラクターの個性を引き立てるのにかなり貢献しているはずです。

太田がいなければ、第二小隊キャラクター相関図は線の数が少なく、また線が弱々しいものになっていたでしょうね。作品にとって重要なキャラクターです。

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シリーズ記事『機動警察パトレイバー』


第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>
第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>
第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>
第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>
第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>


同時にこの企画を始めた(そして私が置いていかれた)psb1981さんのパトレイバー記事はこちら。

カテジナ日記 カテゴリ:パトレイバー

発端となったTwitterでの『パトレイバー』話のまとめはこちら。

『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
http://togetter.com/li/801061
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進士幹泰(しんし みきやす)は、物語の中心である第二小隊メンバーでありながら、山崎ひろみ同様、脇に回らざるを得ないキャラクターです。
そして彼もまた、イングラムに乗らない男子のひとりです。

まずは、Wikipediaから基本情報を引用するところから始めてみましょうか。

警視庁警備部特科車両二課第二小隊員。二号機バックアップ(指揮担当)。階級は巡査。静岡県藤枝市出身。東京大学卒。第二小隊で唯一の妻帯者である。公務員一家に生まれ、かつてはコンピュータ関連会社の優秀なサラリーマン[12]であったが、ふとした気の迷いから警察官に転職し、後藤のスカウトで特車二課に配属された。気が弱いためフォワードの太田の暴走を止められず、胃薬を常用している。後に二号機のバックアップを交替し、後方支援(輸送車)に回るが、劇場版シリーズなどで香貫花や熊耳が不在の場合は、輸送車から二号機を指揮する姿も見られた。身体を張る職務は苦手だが、コンピューターの扱いに長け、冷静かつ奥深い洞察力には他の隊員も一目を置く。
Wikipedia:「進士幹泰」より


アニメーションで『パトレイバー』に関わった押井守監督は、山崎ひろみに対して、いわゆる「主人公チーム」に必要な類型的なキャラクターであると言っていました。

では進士さんはどうかと考えると、とりあえず太田の逆位置に配されたキャラクターではあるでしょう。
  • 太田の低身長、がっしり型、太眉に対しての、長身、痩せ型、メガネ
  • 正規の教育を受けた警察官に対しての、脱サラ転職組
  • 強気で猪突猛進に対しての、気弱でナイーブな性格
  • 肉体派体育会系に対しての、頭脳労働文化系
  • 硬派で女性に不器用に対しての、第二小隊唯一の妻帯者

太田のキャラクター要素をひっくり返していくと、基本的には進士になります。

まさに凸凹コンビと呼ぶにふさわしく、普通に考えれば、長所短所の全く違う2人はぶつかりながらも良いパートナーになっていく、というのが物語でよくあるパターンですね。

ですが『パトレイバー』ではそんなことはなく、「太田を抑えるのは不可能」という上司判断で、2号機指揮は早々に熊耳 武緒へあっさり交替します。

このあたり、元々、太田の抑え役として強い女性キャラクター(熊耳、アニメでは香貫花)を出す予定があったからでしょうが、お仕事だから相性の悪い組み合わせは早目に介入して改善する、という面が見えて面白くもあります。
失敗やケンカをしながら、パートナーとして認め合っていくなどという気の長いプロセスは、ドラマの中だけの話で、社会人のお仕事現場では不要なのです、といった感じ。

民主主義国家の巨大ロボット


『パトレイバー』において、公権力が巨大な暴力(イングラム)をふるうためのシステムは、直接、暴力を行使するパイロット(フォワード)と、それをコントロールする指揮担当(バックアップ)に分かれています。
キャラクター的にも、体育会系のパイロットと、文化系の指揮担当といった感じですね。

これは言わば巨大ロボットのシビリアン・コントロール(文民統制)と見ることもできるかも知れない。
民主主義国家におけるロボットは、誰か個人の倫理や正義には委ねられない。
もちろん指揮担当は、自由意志で就職した個人であって、政治家と違い国民から選ばれたわけではありませんが、国家のロボットをコントロールする代表者ではあるでしょう。

そういう見立てにおいては、分かりやすく軍人タイプの太田の暴走を止められないという状況は、完全にシビリアンコントロールを失っているといえます。
進士に不信任案が出され、政権が交代したのは、プロセスとしては妥当ですね。

但し、交代した熊耳が、太田を制御できるのは、彼女が太田より階級が上で、なおかつ柔道で太田を投げ飛ばせるほどに強かったからですけどね。
「自分より格上に従う」という、犬みたいな単純なルールですが、それが太田に一番有効なのも確かです。
太田は「上官」に従っても「文民」に従う気はゼロなので、シビリアンコントロールには結局の所なっていません。

とにかく進士さんは、太田のコントロール、つまりロボットのコントロールに失敗し、以後、脇役に回ることになりました。

進士さんはどういう元サラリーマンであるべきか


太田とのコンビ解消後は、進士にあまりキャラクターとしての見せ場がありません。
指揮から降ろされたことで「ロボット」に直接関わる立場でなくなった上に、もともとキャラが濃い太田の逆位置キャラクターとして薄めなのですから、その太田とやりあってないと存在価値が乏しくなるということもあるでしょう。

その意味では、「壁」役ひろみちゃん、と同じく、脇にいる「メガネ」役になってしまっています。「主人公チーム」にひとりぐらいは必要だが、特に重要な役割が与えられない「メガネ」……。

進士さんがレイバーに乗る、という選択肢は、劇中の理由でいえば、適正検査によるものでしょうが、そもそも太田の逆位置キャラクターとして無いでしょう。
また、もうひとつは『パトレイバー』の作品構造上、レイバーに乗るには、ある種の「バカ」であることが必要です。
『パトレイバー』は、屈託なく、ロボットに乗り、暴力によって正義を行使する時代の作品ではなく、パトカーカラーのロボットに乗って、東京の平和を守るのは、恥ずかしくて並みの大人には出来たものではありません。
常識人で、妻帯者で家庭もある進士は、野明や太田が持つ、ある種の純粋性、幼児性が無く、ロボットに乗る資格がないのかも知れません。

進士と同じく、レイバーに乗れないひとり、篠原遊馬の事情はもう少し複雑ですが、それはまた項を改めて。

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個人的には、前職がコンピュータ会社であることを活かして、よりシステムエンジニア的な活躍をしてもいいかも、と思いましたが、整備班のシバシゲオもかなりコンピュータにも強いようなので、それも難しいか…。
TVアニメではバドを保護し、劇場版では方舟の謎を解明した、シゲの部屋ですが、キャラクターが集まる溜まり場になったのは彼が気兼ねのない独身であるからで、妻帯者の進士でそんなことはできない。

進士さんの妻・多美子さんが、きっちり物語に関わるような形であったなら、バドの保護に一枚噛むようなことも出来たかも知れない。その時に、子供(赤ちゃん)がいれば、母・多美子さんとバドと赤ちゃん、という関係も少し面白いかも知れない。本物の母ですからね。
でも、進士さん自体が取り上げられることも少なく、当然、家庭も特にクローズアップされることはないのでした。

では少し出自を変えて、篠原重工から二課へ出向しているエンジニアぐらいまですれば、シゲと差別化して独自性が保てるかな?(そういう事ができるかどうかは別として)
警察の論理に対して、サラリーマンとエンジニアの論理で仕事をするキャラクター。
ロボットアニメの博士役に近いかも知れない。(整備班はあくまでメカマンなので)
ただ篠原重工関係者だと、遊馬のキャラクターを侵害するかも知れないな……。
その場合は、性別を女性にして、メガネ理系女子にでもすればいいかも知れない。
それはそれで太田の逆位置キャラという役割はなくなってしまうけれど、本編でそれが活用されているわけではないし、男性のメガネに需要はなくても、女性のメガネには需要があるかも知れない。あるだろう。あります。

進士ミキちゃんではなく、男性のままでというこであれば、サラリーマン時代の職種を社交的な営業マンなどにして、いわゆる公務員、警察官とは違うスキルや価値観を持っているキャラクターにしてみたら……あれ?

元営業マンの警察官?……どこかで聞いたような?

都知事と同じ名前の青島です


TVドラマ『踊る大捜査線』は『パトレイバー』に強い影響を受けた作品です。

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監督の本広克行もそのことを公言しています。

機動警察パトレイバー - 作品発表の1988年を10年後である1998年からの数年間の近未来の東京を中心とした地域を舞台とした漫画およびアニメ作品。主人公たちの所属する警視庁警備部特殊車両二課は周りに何もない東京湾の埋立地にある。監督である本広克行などに強い影響を与え、特に同監督の『交渉人 真下正義』はこの作品へのオマージュが多々存在する。本広自身も『機動警察パトレイバー』文庫版第一巻367頁に寄せたコメントにおいて「踊る大捜査線は機動警察パトレイバーに影響を受けた」と告白している。
Wikipedia:『踊る大捜査線


私が最初に読んだ、本広監督による『パトレイバー』話は、雑誌『GaZO』(1998)での押井監督との対談だったように思います。

このドラマの主役である、都知事と同じ名前の青島刑事(織田裕二)は、元営業マンでしたね。

かつてはコンピュータシステムの開発会社「シンバシマイクロシステムズ」に勤務する成績ナンバーワンの営業マンであったが刑事ドラマの刑事に憧れ[4]、警察官に転職。TVシリーズ第1話の冒頭部分の模擬取り調べでは、被疑者役にカツ丼を勧めるなど昔風の刑事ドラマに出てくるような取り調べを行い、「刑事ドラマの見過ぎ」と言われている。交番勤務の後、湾岸署に配属され、念願の刑事になった。「脱サラ刑事」と揶揄される事もあったが、サラリーマン時代に培ったスキルが捜査に役立つ事も度々あった。
Wikipedia:青島俊作


元営業マンの青島刑事は、サラリーマン時代のスキル(要領の良さ)を捜査に活かしたりしていました。

けれど特車二課は、レイバーの操作はすれど、事件の捜査しない。
営業マンの社交能力も役に立ちそうにないし、二課にいるなら必要のない経歴ですね。
でも、体育会系の太田のあしらいは上手くなるだろうな。
そんな進士さん、進士さんじゃない。という気もするし、しない気もする。

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シリーズ記事『機動警察パトレイバー』


第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>
第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>
第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>
第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>
第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>


同時にこの企画を始めた(そして私が置いていかれた)psb1981さんのパトレイバー記事はこちら。

カテジナ日記 カテゴリ:パトレイバー

発端となったTwitterでの『パトレイバー』話のまとめはこちら。

『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
http://togetter.com/li/801061
特車二課の「パトレイバー」に乗れない男子のひとり。

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ゆうきまさみ

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まずはWikipediaでの登場人物紹介を引用してみましょうか。

警視庁警備部特科車両二課第二小隊員。後方支援担当。階級は巡査。沖縄県石垣島出身。通称「ひろみちゃん」。身長2メートルを超す強面の巨漢で、レイバー操縦技能は持つが、イングラムのコクピットの狭さから搭乗できず、後方支援に回る。なお警察に入った理由は、実家が漁師であるが、本人はとても船に弱い体質であるからである。その体躯ゆえに重火器を任される場合が多い。しかし、その外見に似合わず器用で、世話好きな心優しい男である。また、涙もろく恐がりであり、争い事を好まず、進士と並ぶ第二小隊の良識人である。
Wikipedia:「山崎ひろみ」より


沖縄出身なんですね(知らなかった)。
それ以外はよく知っている、第二小隊の仲間、「ひろみちゃん」です。メインキャストのひとりです。

映像で『パトレイバー』に関わった押井守は、山崎ひろみのことをインタビューでこう語っていました。
「レイアウトのために存在するキャラクター」であると。

映像の中での、ひろみちゃんの貢献


押井 第二小隊の6人は描くしかないから、やったけどね。あれは、本当は5人組ですからね。実は、5人組というメカものの基本構造は師匠(鳥海永行氏)が作ったものだからね。

―ああ、「科学忍者隊ガッチャマン」ですね。石ノ森章太郎さんの「レインボー戦隊ロビン」は7人でしたかね。いずれにしても、ヒーローとヒロイン、準ヒーローと子供か小男、そして大男という構成ですね。

押井 レイアウトの都合上そうなるだけであってね、凸凹の身長の男と綺麗なお姉ちゃん。その枠組み自体、人間ドラマとして構成させるのは不可能でしょう?実に足手まとい。第二小隊も基本的にこの構造だったでしょう。

押井守監督 インタビュー(2)より


この話でいくと山崎は、『科学忍者隊ガッチャマン』でいえば、みみずくの竜であるということですね。
巨体で、気は優しくて、力持ち。明るい笑顔が今日もゆく。

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映像演出をする押井監督からすると、画面レイアウト上のメリハリのためのキャラクターであり、別のインタビューでも彼に対して「壁」という言い方をしていたと思います。
つまりは「チームもの」でのキャラクター類型のひとつであり、画面レイアウトでの活躍が大きいと。

全国3500万人のひろみファンには申し訳ないですが、個人的には実際にそうだろうな、とは思います。
類型的なキャラクターが悪いと思いませんし、山崎ひろみというキャラクターをキライというわけでも、もちろんありませんけどね。

レイバーに乗れない人は何をしたらよいのか問題


『機動警察パトレイバー』において、山崎ひろみは、レイバーに乗れません。
技術的な問題ではなく、巨体ゆえにレイバーのコクピットに搭乗できないからです。
Wikipediaによると、船にも弱い体質と書いてあるので、乗れたとしても三半規管的な意味でやはりダメかも知れません。

『パトレイバー』はロボット物なので、国家権力、警察としての「力」はレイバーが執行します。
巨体で重火器も取り扱えるという、個人の戦闘力としては作品最強レベルのひとりである山崎ですが、レイバーに乗れない彼は、作品の構造上バックアップに回るほかありません。

かくして、彼にはバックアップキャラクターとして、ふさわしい内面が与えられていきます。
  • 気配り上手
  • 涙もろく、怖がり
  • 基本的に争いを好まない
  • 世話好き
  • 動植物が好き
  • 料理が得意
  • 下戸(おちょこ1杯で酔っぱらう)

箇条書きにすると、どこのヒロイン?と思うような特徴の数々。
2mの巨体とのギャップによる面白さを作るためでもあったでしょうが、きわめて女性的ですね。
さらにいうならば作品中、もっとも母性を前面に出したキャラクターと言ってもいいかも知れない。

つまり、それが最もバックアップ(後方支援)にふさわしいキャラクターであったのでしょう。

しかしながらこれは男性が戦闘をし、女性が後方にいるべき、という生まれ持った性別での単純な役割分担の話ではありません。性別に関係なく、職務に応じて異なる、人間的な性格や資質によるものなのだろうと思います。

ですからこのキャラクター性は、2mの巨体と怪力でありながら、バックアップ担当にならざるを得なかった山崎ひろみに与えられた「RIGHT STUFF(正しい資質)」なのでしょう。

自分の中にある「暴力」とどう付き合うか


野明も「ひろみちゃん」と呼んで、親しくしているようですが、恐らく彼に男性を感じることはなく、性別を意識する必要のない友人としての関係性ではないかと思われます。

その「ひろみちゃん」について、psb1981さんはこう書かれています。

レイバーに乗って戦うには彼は優しいのである。いや、本当は優しいというよりも怖がっているのだと思う。何を怖がっているのかと言えば、自分自身が男性であること、である。つまり彼はその恵まれたフィジカル(男性性)ゆえに、(正義であろうとなかろうと)暴力の恐ろしさや、それを行使することの責任を知りすぎているのである。

山崎ひろみ(カテジナ日記)
http://tentative-psb1981.hatenablog.com/entry/2015/04/04/210154


「ひろみちゃん」は、自分の恵まれた体躯による暴力性に気付いているだろう。
その肉体で、スタローンやシュワルツェネッガーのような、アクションヒーローをこなすことも可能であり、事実、常人では扱えないような重火器で活躍することもある。

しかし彼自身の性格は争いを好まず、暴力性は基本的に封印されている。
縁の下の力持ち、バックアップの仕事も恐らく厭うことはない。(太田であれば3日で辞めるだろう)

つまり「ひろみちゃん」が持つ暴力性は、彼が持つ女性的、母性的な精神性によって制御されている。
これは、巨大な暴力であるレイバーを、少女であり、イングラムの母である泉野明が制御する構図と似ていると言えなくもない。

そう、いわば「ひろみちゃん」は、特車二課第二小隊のレイバー三号機だったんだよ!

mmr

レイバーは、ひろみちゃん。そしてパイロットは、女性的なひろみちゃん。

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『機動警察パトレイバー』において、巨大な暴力装置であるレイバーに対して、どのようなスタンスを取るか、というのは作品を考える上での面白いポイントのひとつです。

この作品では、男性がレイバーに乗って、その力を行使するということが少なく、山崎ひろみはそのうちのひとりです。

彼以外に、従来のロボット物主人公のように男性的な男性が乗るパターンは太田が、父の作ったロボットに乗らないパターンを遊馬が、天才パイロット少年が乗るパターンはバドが、それぞれ担当しています。

それは、それぞれのキャラクターに関する項で、詳しく考えることにいたしましょう。

次の記事へ、<つづく>




シリーズ記事『機動警察パトレイバー』


第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>
第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>
第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>
第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>
第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>


同時にこの企画を始めた(そして私が置いていかれた)psb1981さんのパトレイバー記事はこちら。

カテジナ日記 カテゴリ:パトレイバー

発端となったTwitterでの『パトレイバー』話のまとめはこちら。

『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
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ゆうきまさみが描くマンガ版『機動警察パトレイバー』は、1988年に連載がスタートしました。

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『機動警察パトレイバー』は、メディアミックスを前提とした企画で、OVA、TVアニメ、劇場版などのアニメーション作品としても展開しており、マンガ版はそのひとつ。
だから原作でもコミカライズでもなく、「マンガ版」である、というのが、この作品の基本情報です。

アニメ『機動警察パトレイバー』は、いわゆる「巨大ロボットアニメ」と呼ばれるジャンルの作品です。
マンガ版は「ロボットアニメ」の世界観をコミックというフォーマットで表現した作品ということになるでしょう。

では連載がスタートした1988年において、その「ロボットアニメ」というものは、どういう存在感だったんでしょうか。
WIkipediaのアニメ年表と、私の子供時代のあやふやな記憶をたよりに、思い出してみましょう。

1988年放送のロボットアニメ


Wikipedia:1988年(昭和63年)のTVアニメ作品一覧

これを見る限り、「巨大ロボットアニメ」は、わずかに以下の作品のみです。
  • 『トランスフォーマー 超神マスターフォース』
  • 『魔神英雄伝ワタル』

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しかも、二作品とも『機動戦士ガンダム』に代表されるような、俗にいう「リアルロボットアニメ」ではあありません。ターゲット層は、かなり低めの年齢層に設定されています。

ちなみに前年の1987年を見れば、『機甲戦記ドラグナー』が放送されています。
ただ、この作品を最後に『戦闘メカ ザブングル』、『聖戦士ダンバイン』、『機動戦士Ζガンダム』などを生んだ、名古屋テレビ土曜17:30~のリアルロボットアニメの流れは終了しています。

1988年をTVアニメという観点で見ると、「リアルロボットアニメ不在の年」だったんですね。

1988年のTV以外のロボットアニメ


では1988年のテレビアニメ以外のロボットアニメを見てみましょうか。
  • 『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(映画)
  • 『New Story of Aura Battler DUNBINE』(OVA)
  • 『六神合体ゴッドマーズ 十七歳の伝説』(OVA)
  • 『トップをねらえ!』(OVA)
  • 『宇宙の戦士』(OVA)
  • 『機甲猟兵メロウリンク』(OVA)
  • 『機動警察パトレイバー』(OVA)

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『機動警察パトレイバー』自身の初期OVAシリーズもここでスタートしています。

『ゴッドマーズ』や、正確にはパワードスーツの『宇宙の戦士』、主人公がロボットに乗らない『メロウリンク』を除外しても、『逆シャア』『トップ』『パトレイバー』と、なかなか充実したラインナップです。

OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)という形式も手伝って、TVアニメの『トランスフォーマー』や『ワタル』と違い、高めの年齢層がターゲットになっています。
関連の玩具ではなく、「映像」そのもの、さらにいえば「ロボットアニメ」というジャンルそのものに価値を感じて、ソフトを購入(レンタル)するような年齢層向けです。

こうして見ても、1988年の「リアルロボットアニメ」はすでに、TVアニメとして放送し、不特定多数の幅広い層が楽しむジャンルではどうやらなかったようですね。

1988年に生まれた、1998年の物語


TVアニメから「リアルロボットアニメ」が消える中、OVAを舞台にして展開されたのが、SFや特撮・アニメのパロディをふんだんに盛り込んだ『トップをねらえ!』。

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(2012/02/24)
日髙のり子、佐久間レイ 他

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そして現実と地続きの世界に現れる、桜の代紋をつけたパトカーロボット『機動警察パトレイバー』。

いずれも、パロディ化したり、面白おかしさを追求してみたり、現実の風景に直結してみたり、豊かな遊び心でロボットアニメを相対化して、自らのジャンルに対して自己批評的でもあります。

両作品ともロボットアニメとしての魅力に満ち溢れているのですが、真正面からではなく、パロディ的な相対化、批評性を持ったアプローチでなされました。

それはOVAを見るような目の肥えたアニメファンのためでもあるでしょうし、リアルロボットがひととおりのバリエーション展開を終えてTVから消えたような時代に、作り手側がロボットものをするために必要なプロセスでもあったのでしょう。

例えばゲームで言えば、『ドラゴンクエスト』的な勇者による魔王討伐の物語が、まずはそのまま受け入れられ、のちに、ツッコミが入れられ、パロディにされ、解体され、「勇者と魔王」という要素で批評的に新しいゲーム(物語)が作られていく。
ジャンルの発展と消費の大きな流れという意味では、こういったものと似たような感じかな、と思います。

ともあれ、このような状況のもと、マンガ版『機動警察パトレイバー』は、1988年に連載をスタートしました。

物語の舞台は、アニメ版での「この物語はフィクションである。…が、10年後においては定かではない」が示すとおり、連載時より10年先の1998年。

それは現代の私たちから見て、15年以上過去の「近未来」の物語。

機動警察パトレイバー 文庫版 コミック 全11巻完結セット (小学館文庫)機動警察パトレイバー 文庫版 コミック 全11巻完結セット (小学館文庫)
(2011/03/01)
ゆうき まさみ

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というわけでは、シリーズ企画として『機動警察パトレイバー』について、複数の記事を書いてみようと思います。今回はその第1回というか第0回に相当します。

普段は、うんざりする長文を何ヶ月かに1度書くのが、このブログのパターンですが、今回の『パトレイバー』シリーズ記事では、1つの作品キーワードに対して短文テキストを量産する形を取ります。

キーワードは、「泉野明」「篠原遊馬」などのキャラクターや、「第二小隊」「企画七課」などの組織、「イングラム」「グリフォン」といったレイバー(ロボット)など、『パトレイバー』の重要なものになるでしょう。

この企画は、psb1981さん(@takepon1979)との、Twitterでの『機動警察パトレイバー』話がベースになっています。

その時のやりとりをまとめたものはこちら。

『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
http://togetter.com/li/801061


当初はとりあえずツイートを整理して、いつものような長文でブログ記事に仕立て直すつもりでいましたが、このTogetterが想定以上に注目を集めてしまったこともあって、アプローチを変えてみることにしました。

ちなみに、psb1981さんはご自身のブログですでに、「作品キーワードに対する短文」形式で記事を多数書いていらっしゃいます。

カテジナ日記
http://tentative-psb1981.hatenablog.com/


※タイトルの通り、富野アニメ記事も大変刺激的で示唆に富んでいますのでご覧になるとよいでしょう。

見て頂くと分かる通り、まあ詰まるところ、「作品キーワードに対する短文」形式は先行するpsb1981さんの後追いなわけです。これ。こういうのやりたい。

だが、考えてみて欲しい。まったく同じキーワードに対して、複数人がテキストを書くことによって、ひとつのキーワードに異なった視点や情報の厚みのような価値がつくりだせないだろうか。

例えば最初の記事として、psb1981さんは「時代背景」として、当時の日本の社会状況について書いていらっしゃいます。

パトレイバーの時代背景(カテジナ日記)
http://tentative-psb1981.hatenablog.com/entry/2015/04/03/233435


そこで(後追いの)私は、当時の「ロボットアニメ」がどうだったのか?という時代背景について、ほんの触り程度ですが書いてみました。

調べようと思えばどれだけでも調べられてしまうので、今回のテーマは短文だということで割り切ってはいるのですが。
実際、他にも、1988年の「週刊少年サンデー」の状況と『パトレイバー』の登場や、作者ゆうきまさみのキャリアを中心にした当時の背景などさまざまな視点で書くことが可能でしょう。(私には書けないが)

あくまで私が書ける範囲ではありますが、後追いのフォーマットコピーでも別の視点から価値はあると信じて、色々書いていきたいと思います。
ただこういう形式で書いたことがないので、どうなるか私にも分からない。

たとえば今回の自分の文章を見直すと、圧倒的にいつものおふざけが足らないと感じる。
おふざけネタが見つからない、定まらない、という理由で、ほぼ完成したテキストを平気で1週間でも10日でも放置する私には正直落ち着かない。
だが、記事本数を増やすとなればそうも言っていられない。

正直、今回の記事、初回とはいえ、何も言ってないに等しいけどね。
中身の詰まった短文って難しいな……。シリーズトータルでなら価値を見出すことができるだろうか。

私にとっては、バビロンプロジェクトぐらい21世紀への挑戦ですが、昨日の夢が今日の希望、明日の現実であると信じて、一歩一歩着実に実を結ばせていこうと思います。

それでは次の記事へ、<つづく>

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シリーズ記事『機動警察パトレイバー』


第1回:1988年に生まれた、1998年の物語<シリーズ『機動警察パトレイバー』:時代背景>
第2回:コワモテの優しい巨人<シリーズ『機動警察パトレイバー』:山崎ひろみ>
第3回:MEGANE AND POLICE(メガネ&ポリス)<シリーズ『機動警察パトレイバー』:進士幹泰>
第4回:悪・即・弾 その男、凶暴につき<シリーズ『機動警察パトレイバー』:太田功>
第5回:第二小隊の学級委員は決して犯罪者に屈したりはしない!<シリーズ『機動警察パトレイバー』:熊耳 武緒>


同時にこの企画を始めた(そして私が置いていかれた)psb1981さんのパトレイバー記事はこちら。

カテジナ日記 カテゴリ:パトレイバー

発端となったTwitterでの『パトレイバー』話のまとめはこちら。

『機動警察パトレイバー』を中心とした、ゆうきまさみに関するはてしない物語(ツイート群)
http://togetter.com/li/801061

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