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前回、冨野アニメ体験を、前編後編の二回に渡って書いてみましたが、『逆襲のシャア』について書いたとき、当時の友人がこんな感じのことを言っていたのを思い出した。

「サザビー(とシャア)って弱いよな。νガンダムにはコテンパンにやられて。
結果的に、νガンダムは五体満足なのに、サザビーは大破して脱出コクピットだけだもんな。しかもアムロにつかまるし。これはサザビーが弱いのか、シャアが弱いのか」


確かに。
戦いの結果だけを見れば、ファーストガンダムとは違い、大きな差がついてしまいましたね。
アムロとシャアのパイロット技量は、ほぼ互角でしょうし、νガンダムとサザビーの性能もシャア本人が望んだとおり、ほぼ互角のはずです。
なのになぜ、アムロとシャアの最終決戦では、このような大きな差がついてしまったのでしょう。

というわけで、今回のお題は、「νガンダムとサザビー、どちらが強いのか」から転じて、
「νガンダムvsサザビー戦は、なぜ『アムロの完全勝利』という大きな差で決着したのか」です。

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なぜ、シャアはアムロに勝てなかったのか


アムロとシャアの最終決着となる、せっかくのνガンダムとサザビーの一騎討ちが、なぜ
νガンダム = 五体無事
サザビー = 大破→脱出
という、アムロの完全勝利で終わってしまったのか。

私の答えはこれです。
それは、「最後に、νガンダムが小惑星アクシズを押す必要があったから」

「そんなのあったりまえ」「身もフタもない」と言われるかもしれませんが、私にとってはこれが何より重要なことです。モビルスーツの性能もパイロット技量も関係ない。

確か私の記憶では、冒頭の友人の問いに対して、これを答えたら、結果的に言い争いになったような気がする(笑)。友人は、多分、こういう答えは望んでいなかったんでしょう。それは分かる。
ただ、今なら当時よりは分かりやすく自分の考えを説明できると思いますので、当時の友人の問いに十何年かぶりに答え直してみましょう。

私にとって「最後に、νガンダムが小惑星アクシズを押す必要があったから」というのは、結論ではありません。むしろ逆。
これからするのは、「最後に、νガンダムが小惑星アクシズを押す必要があったから」を大前提、つまりスタート地点として考えていくと、νガンダムvsサザビー戦がすばらしい戦いであることが見えてきませんか、というお話です。

大前提から逆算して、νガンダムvsサザビー戦を考える


映画『逆襲のシャア』の制作過程について、私は資料も何もありませんが、ラストの落とし方は決まっていたんじゃないかと思います。
落とし方とはつまり「νガンダムが地球に落ちる小惑星アクシズを受け止めて、アムロとシャアが運命を共にする」というラストです。

この「落とし所」をラストに持ってくることを前提に考えると、場面の流れは以下の順序になりますね。

(A)アムロとシャアの一騎討ち(νガンダムvsサザビー戦)

(B)アムロとシャアの戦闘決着(νガンダムvsサザビー戦終了)

(C)νガンダムがアクシズを受け止める

(D)ああ、メビウスの輪からー、ぬけだせーなーくーてー(エンディング)


さて、ここでは(C)パート(νガンダムがアクシズを受け止める)を中心(大前提)に考えてみましょう。
(C)パートに進むためには、その前にあたる(B)パート終了時に、最低限どういう状況になっているのが望ましいでしょうか?

(B)アムロとシャアの戦闘決着時に望ましい状態
・アムロ(ラストシーンの主演)が勝利する。
・敵味方もなく「アクシズを受け止める」というラストシーンのためには、戦闘はここまでに終了させておく方が良い。つまりシャアの無力化が必要。
・νガンダムに両手が必要。(片手では弱いので、両腕が欲しい)


こんな感じでしょうか。と、なると(B)パートの大まかな形が見えてきましたね。

(B)アムロとシャアの戦闘決着(νガンダムvsサザビー戦終了)
アムロが、νガンダムの両手を失うことなく勝利し、それによりシャアは無力化する。


これをνガンダムvsサザビー戦の基本的なルール(枠組み)としましょう。

とりあえずこの時点でシャアさんに残念なお知らせをすると、サザビーはνガンダムの両腕を切り落としたり、吹き飛ばすことはできないようですね。

では、両腕がダメなら、両足はどうでしょう?

両腕に比べれば、片足、両足ならば無くなってもいいかも知れません。
しかし、足にもバーニア(補助的なロケット噴射口)がついてますから、アクシズを押す推力が弱まってしまうイメージを与えてしまうかも知れません。
また、これは足に限りませんが、大きな傷跡があると、摩擦熱でそこから爆発がはじまってしまう不安を与えてしまうかも知れません。

どうも、νガンダムの両手両足を無くしてしまうのは、「小惑星アクシズを押す」という奇跡の下準備としては、あまりよろしくないようです。これから起こるのが奇跡だからこそ、見ている人の心に不安感や疑念を挟むような要素は出来る限り、とりのぞいておきたいところです。

以前の記事で、「モビルスーツは傷つくことを例外的に許された肉体」と書きましたが、この場面でのνガンダムは傷つくことを許されない状況のようですね。

ここまでを踏まえて、(B)パートの基本条件を少し修正しましょう。

(B)アムロとシャアの戦闘決着
アムロが、νガンダムの両手(できれば両足も)はもちろん、出来るだけ傷を受けない形で勝利し、それによりシャアは無力化する。


ああ、こんなこと、大佐になんて言って説明したらいいか…。あの人、勝つ気まんまんなのに…。

こうして見ると、シャアが勝つとか負けるとかそういう問題じゃないことが分かりますね。

そう、この戦いで本当に大事なのは勝敗ではありません。
「永遠のライバルの最終対決。しかし結果は、勝者が五体満足で勝つ」という、難しい条件が提示された舞台で、「いかに面白い”最後の死闘”をつくればよいのか」という問題です。少なくとも私にとってはそうです。

これは非常にエキサイティングな課題ですよね。
宿命のライバル同士のラストバトル。しかもロボットという傷つく肉体を使ったバトル。できれば壮絶な激闘にしたい。
しかしこの後のラストシーンのためには、勝者は五体満足のまま、敗者は無力化されることが望ましい。
さて、皆さんなら、この戦いをどういう展開にして、どう盛り上げますか?
「映画が面白くなるかどうかなんだ。考えてみる価値はありますぜ!」

ガンダム史上の名勝負となったνガンダムvsサザビー戦


「答え合わせ」は、とりあえず『逆襲のシャア』本編を見ればできますね。
この映画での、アムロとシャア、νガンダムとサザビーの戦いは、まさに死力を尽くした激闘となっていました。
もちろん、戦闘結果は設定された条件どおりに

(B)アムロとシャアの戦闘決着
アムロが、νガンダムの両手、両足を失うことなく勝利し、それによりシャアは無力化する。


となって、次のパートである(C)パート(νガンダムがアクシズを受け止める)へ、キレイにつないでいます。

しかし、だからといって、νガンダムvsサザビー戦が、アムロが一方的に勝っただけの面白くない戦いだとは言う人は少ないでしょう。

YouTube動画があったので、すでに逆シャアを体験した方の確認用に貼っておきますね。(未見の方は一度はちゃんと見るのをオススメします)

逆襲のシャア アムロvsシャア


ファンネル、ビームライフル、バズーカ、メガ粒子砲、ダミーバルーン、バルカン、ビームサーベルなどなど……あらゆる武器をフルに駆使して、死闘が繰り広げられます。
最後は、双方の武器が全てなくなり、拳と拳の殴り合いで決着をつけます(「紅の豚」方式)。

この戦闘シーンは、(C)パート(νガンダムがアクシズを受け止める)を迎えるための条件をクリアーしているのはもちろんのこと、さらにさまざまな補強やフォロー(言い訳)も加えており、全ての要素がラストシーンに生かされていることがすばらしいと私は思います。

νガンダムvsサザビー戦でのポイント


■サザビーのビームサーベルが切り裂けるもの


例えば、サザビーのビームサーベルが、νガンダムの腰の辺りを切り裂くシーン。
シャアがνガンダムを傷つけるシーンは入れておきたい。しかし、ここまで読んだ方には分かる通り、体の重要部分や頭などには手を出せない。
ではどうする?どこを切ればいい?と考えたとき、「致命傷にならないレベルで腰の辺りをサーベルがかすめる」という描写が選ばれたことに私は感動する。確かにどう考えても切り裂けるのはそのあたりの部位しかない。
このシーンは、厳しい制限がある中、それでもνガンダムをギリギリまで傷つけるためのせめぎあいが感じとれて、見直すたびに感動する。

■サザビーを殺して、シャアを殺さない攻撃


肉弾戦によるサザビーへのとどめ。
さっきまでファンネルが飛び交っていた2人の戦いが、原始的な殴り合いで決着する壮絶さが表現できているが、それと同時に単なるパンチやタックルなので、サザビーは大破できてもシャアは殺せない攻撃なのがいい。「俺はお前を殺さない!その機体を殺す!」わけですね。

■裸体(はだか)のガンダム


さらに、νガンダムが全ての武装を使いきって丸裸になったことは、後のシーンにおいても効果を発揮しています。
νガンダムがアクシズを押しているとき、敵味方のモビルスーツ達もアクシズに取りつきはじめましたが、アムロは彼らに対して、こう叫びます。

アムロ 「しかし、爆装している機体だってある」
アムロ 「ダメだ、摩擦熱とオーバーロードで自爆するだけだぞ!」


親切なことに、爆装(ミサイルなど爆弾を積んだ状態)した機体では、とっても危ないことをわざわざ見せてくれています。νガンダムは大丈夫なのか?
心配はご無用。我らがνガンダムは全武装をサザビー戦で使いきっている。それがこの場面では幸いして自爆の心配が無くなるわけです。サザビーとの総力戦が、ちゃんとこのパートにつながって別の形で生きている。
ちなみに何度も言うようですが、爆装してなけりゃ科学的、物理的に大丈夫とかそういう問題ではありません。この場面は結局、「行うは荒唐無稽、見せるは奇跡」ですから、観客が不安感や疑念、引っかかりを生むような要素は出来る限り排除しておく方が良い、ということだと私は考えています。

バランス調整としてのシャア総帥のフォロー


さて、厳しい制約があるにも関わらず、見事な展開を見せたνガンダムvsサザビー戦ですが、あと不足しているものといえば、やはり、あまりに凶悪なハンデで戦わされたネオ・ジオン総帥へのフォローでしょう。
結果だけ見れば、アムロの圧勝に見えてしまうだけに、いくつか言い訳を用意して、バランスを整えてあげるべきです。ナナイばりの優しさに大佐も胸の中で泣いてくれるかも知れません。

■シャア敗北のためのエクスキューズ(言い訳)


・戦略レベルでの勝利
この映画の舞台は、アコギなこともしながら全てシャアが整えました。
このレベルの戦いでは、最強のエースとは言えパイロットに過ぎないアムロはどうしようもないところで、連邦上層部の無能さもあって、ロンド・ベルは後手後手をつかまされることになります。
この辺りは、「銀河英雄伝説」のラインハルトとヤンのようなもので、お互いが最も実力を発揮できる階層をずらすことで、それぞれの活躍できるエリアを用意する、という形ですね。

・サイコフレームの技術提供
νガンダムは、シャアからの技術提供があって完成したモビルスーツです。シャアが敵に塩を送った理由は「対等の条件で決着をつけたかった」から。
物語の冒頭、サザビーvsリ・ガズィ戦では、明らかにサザビーの優勢でしたから、「大佐が技術提供しなければ、アムロにも普通に勝ってた」とシャアファンは、「もしも」の夢を見ることができるでしょう。
「そのままいけばシャアが勝つルート」が存在しえることを見せた上で、シャアの技術提供→νガンダムの登場なのがすばらしい。
言ってみれば「νガンダムの勝利の何%は、(敗者である)シャアのおかげ」なわけです。

・ナナイのわりこみ
νガンダムvsサザビー戦で、ナナイがシャアの脳内に話しかける。

シャア「なに?戻れと言うのか?ナナイ!男同士の間に入るな!」


これでスキができて、サザビーが大破するきっかけとなりました。まあ、その前から押されっぱなしなんですが、ちゃんとシャアの外部にアムロに遅れをとった理由を1つ作っておくのは、良いやり方だと思います。

劇中でシャアが「対等の勝負」と言っているのと裏腹に、物語の構造上、対等の勝負とはなりえない2人のバトルですので、この辺りのシャアへのフォロー(言い訳)は、バランス調整としてすばらしいと思います。

あとはそうですね、ガンダムをミリタリー的に見る能力のある方は、サザビーとνガンダムのカタログスペックを比較して、どちらが強いかという分析ができるでしょう。でも個人的には、この二機のモビルスーツ戦には物語上の役割があるので、それに合うように、スペック表をうまいことバランス調整すればいいという話だと思うんですよね。言ってしまえば、架空兵器のデータだから。
一番大事なことは作品で果たすべき表現や目的であって、あとのことはその実現のために揃えていけばいいと私は思います。




νガンダムvsサザビー戦のまとめ


さて、最後にここまでの内容をまとめておきましょう。

お題
「νガンダムvsサザビー戦は、なぜ『アムロの完全勝利』という大きな差がついたのか」

私の答え(前提)
「最後に、νガンダムが小惑星アクシズを押す必要があったから」

これを前提としたときの、νガンダムvsサザビー戦の勝利条件(ルール)
「アムロが、νガンダムの両手(できれば両足も)はもちろん、出来るだけ傷を受けない形で勝利し、それによりシャアは無力化する」

νガンダムvsサザビー戦の課題
「この条件を守った上で、アムロとシャアのすばらしいラストバトルをつくりあげること」

実際に行われたバトル
・両者が全ての武器を駆使し、全てを使い果たすまで戦う。武器はどんどん壊れるが機体は傷つかない。
→シャアにνガンダムを傷つけさせるために、腰の辺りを切り裂くことを選ぶ。絶妙の位置調整。
→全ての武装を使い果たしたνガンダムには、アクシズを受け止めるときに爆装→自爆の危険性がなくなる効果も。

・全ての武装を使い果たした両者は、殴り合い宇宙(そら)へ。肉弾戦で決着。
→壮絶なフィニッシュであると同時に、シャアを殺さず、脱出へスムーズへつながる優しい攻撃方法。

シャアさんへのフォロー
・戦略的にはシャアさんの勝利にしておく(最後の奇跡以外は、シャアがつくった通りの舞台)。
・アムロに技術提供しなければ普通に勝ってたかも知れない未来を見せておく(序盤のサザビーvsリ・ガズィ戦)。
・ナナイさんからキャッチが入ったので、電話をとるスキにやられたんです(シャア本人の外部に言い訳をつくっておく)。

実際のところ、このバトルがどのような意図で、どのような過程で組み立てられたか、全く知らないのですが、私にとってνガンダムvsサザビー戦は、こういうバトルです。難しい条件ではありましたが、すばらしいラストバトルになっていると思います。
ガンダムの歴代ベストバウトTOP10なんかを決めるときに、この戦いに票を入れる人も多いんじゃないでしょうか。

■最後に


映画全体として見たときに、そもそも映画の落とし方である「νガンダムが地球に落ちる小惑星アクシズを受け止めて、アムロとシャアが運命を共にする」が良くない、好きではない、という方もいるでしょう。私個人は、アムロとシャアを始末することに賛成だったので、この落とし方は「あり」ですが、映画の作り方はさまざまですので、いろいろな可能性があると思います。

ただ、ここまで語ったことに関しては、そういう「落とし方」の是非は関係ないと考えています。
違う落とし方があれば、違う条件と課題が設定され、それをクリアーし、さらにそれ以上のシーンにするために別のフィルムが作られる、というだけの話で、やることは同じですから。

だから私は、この映画のテーマがどうとか、落とし方がどうとか、そういうこととは別に、サザビーのビームサーベルがνガンダムの腰を切り裂いたことに毎回感動しているのです。
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Re: サザビーのサーベルはνガンダムを切り裂いたか <『逆襲のシャア』 νガンダムvsサザビー戦のルール>

面白く記事を読ませていただきました。

ただ、気になったのですが、νとサザビーの戦闘結果に関する着目点が
「製作側の視点で語られる原点」のようにも見られるのですが、
アムロの遠隔操作によるバズーカでシールドを、ファンネルの撃ち合い、
その他の二人のニュータイプとしての描写から考えて、
その二人のニュータイプの能力差が、五体満足のν、サザビーの崩壊
という考え方はいかがでしょう?
シナリオを原点とする視聴者側ならではの発想になるとも思います。
MSの性能も武器もパイロット技術も互角なら、あとはニュータイプ能力と「運」の差でしょうか?
その運がこの記事の内容であれば製作側、視聴者側双方兼ね備えた原点になれるかとも思うのですが…

Re: Re: サザビーのサーベルはνガンダムを切り裂いたか <『逆襲のシャア』 νガンダムvsサザビー戦のルール>

コメントありがとうございます。
答えになったかどうかは分かりませんが、いただいたコメントをきっかけに新しく記事を書きました。
よろしければご覧ください。

http://highlandview.blog17.fc2.com/blog-entry-191.html

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