ケーブルTVで「イノセンス」がやっていた。押井守特集をやってるらしい。
当時劇場で見たなあ、とか思いつつチャンネルを変えた。
(で、後日「パト2」だけ見た)

「イノセンス」で思い出すのは、もはや一点だけ。劇場での初見時の記憶だ。
はるか昔のことなので、あんまり覚えてないのだが、1シーンのことなのでうろ覚えながら書いとこう。

「イノセンス」のお話の骨組みは恐ろしくシンプルなので、ネタばれも何もないのだけど、映画の後半、主人公バトーさんが敵の本拠地に乗り込む。少女型アンドロイドが山ほど出てきて、大ピンチを迎えるバトーさん。

ここから「イノセンス」のクライマックス。
裸の少女型アンドロイドの大群がバトーさんを襲う!・・・あれ?
良く見ると、アンドロイドとアンドロイドが戦っている。
仲間割れ?いや、違う。
アンドロイドを次々と倒していくのは、わずか一体のアンドロイドなのだ。
しかし、なぜ?このアンドロイドは何者?
それはバトーにも、見てる僕らにも良くわかっている。
「少佐が来た!」

と、いうわけで真打ち登場。
バトーのピンチに、前作「攻殻機動隊」の主人公「少佐」こと草薙素子見!参!
少佐は前作で肉体を捨てた。で「ネットは広大だわ」と言いつつ、電脳の海に消えていく。
バトーにとっては「彼女」の記憶(と思い)こそが、確かな自分のアイデンティティ。
肉体を持たない少佐は、敵少女アンドロイドの一体をハックして、バトーの危機を救ったわけだ。

乱闘の中、一体のアンドロイドがおかしな動きをはじめ、他のアンドロイドを次々に倒していき、最後はバトーさんと銃を向け合って決め!
この登場シークエンスとそれを支えるアクション作画は、「イノセンス」中、最もテンションが上がった瞬間だった。

で、ですね。本題はこの後なんですよ。私が印象深いのはこの後のシーン。
当時、劇場で見てるとき、少佐の登場にテンション上がりつつも、次の瞬間思ったのは以下のこと。
少佐の姿は「敵と全く姿・形が一緒の少女アンドロイド。ってことは、この後、少佐なのか、敵アンドロイドなのか、画面上でどう区別をつけたらいいの?」

そうなんだよね。ザクとザクが戦うみたいなもんで、全く見た目上の区別つけられないんだよね。
登場シーンは区別がつかないからこそ、サプライズが決まって素晴らしかったんんだけど、この後はどうするんだろう?どう処理するんだろう?僕の興味はこの問題をどう解決するのか、に引き寄せられた。
見た人は分かってると思うけど、どうしたと思います?

「イノセンス」では、次の瞬間、バトーさんが裸の少女アンドロイド(少佐)に自分のジャケットをそっとかけるのです。
少佐「・・・そういうところ、変わってないわね」

素直にうまい!と思わず感動した。
このシーンは、一つの行動で2つの目的を果たしている。

(1)画面上の問題の解決。バトーのジャケットを着た少佐(アンドロイド)は、敵アンドロイドとの識別が容易に。
(2)久しぶりに会った男女の再会シーンとして、2人の関係とバトーの思いを表現。

少佐は肉体を捨てた身。今のかりそめの体も少女型とはいえアンドロイド。少佐にとってはこのままの姿で何も問題はない。
だがバトーは、好きな女性が裸のままでいることに許せないのでしょうか、ジャケットを着せる。アンドロイドの体に。

少佐はそんなバトーに、肉体のあった頃の自分とバトーの関係を思いだし、そっとつぶやく。「・・・そういうところ、変わってないわね」

いやすばらしい。先ほどの僕の疑問を完璧に処理したばかりか、それ以上の意味をこのシーンにこめた。
一つのシーンにいくつかの役割をさせるのは、2時間しかない映画では特に重要なことだと思うが、その意味では極めて映画的に有効な処理ではないだろうか。

そんなわけで。

イノセンス、それは
少佐の登場シークエンスとバトーのジャケットだ。
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