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この世に生を受けて以来、富野アニメで産湯をつかい、アニメーションを見続けること幾星霜。

老いさらばえた現在ではさすがに視聴本数はかなり抑えているけれど、それでもハードディスクレコーダーに録画されてる作品の視聴が追いつかない。
それらは再生ボタンが押されないまま、地表の空気に触れることなく眠り続ける化石のように、クールごとに地層として折り重なっていく。

ということで、地層と化した録画を消化すべく、先日『この素晴らしい世界に祝福を!』全話を見ました。


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2016年1月~3月放送の作品なので、地層としてはかなり新しい。
もちろんもっと下の地層に、カンブリア、オルドビス、シルル、デボン紀などの「HDの中の古生代」と呼ばれる録画もあるのですが、この作品を見るのを決めた理由は、1クール全10話しかなかったこと。
見やすい。

小説原作の作品ですが、私は小説はまったく読んでいません。
いわゆる異世界転生(転移?)もので、かなりキャラクター力(ちから)で押し切るファンタジーRPGコメディといったところでしょうか。楽しく見ました。面白かったです。

視聴前に作品の傾向から「異世界RPG」に介入するようなメタ視点は想定していたのですが、その世界でのオンラインゲーム的なゲームルールが、想定以上に物語内できっちりと大事な役割を果たす作品でした。

一癖も二癖もあるキャラクターが最大の魅力の作品だと思いますが、けしてそのためにゲームシステム(ルール)をないがしろにはしていませんでした。むしろキャラクターの特徴をシステム(ルール)の枠内でキレイに説明できるはずです。

呼べば答える腐れ縁 ただれた仲間だ 人畜無害の人材


『この素晴らしい世界に祝福を!(このすば)』の世界では、主人公を始めとした冒険者たちは、戦闘やクエストで得た経験値を元に、任意でスキルポイントを割り振って、冒険に役立つさまざまな技能を覚えることが出来ます。ゲームそのままですね。

もしこの世界へ私が転生するとしたら、どのスキルにポイントを使うのか相当悩むことになるでしょう。
異世界とはいえゲームではなく、そこで本当に生きていかねばならない現実でもありますからね。

さてその一方、主人公パーティは全員頭のネジがおかしいキャラクターたちばかり。
まずはそのイカれた仲間たちを紹介しよう。

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エントリーNo.1
スキルポイントを爆裂魔法にしか割り振ってない魔術師

・最強の爆裂魔法(ティルトウェイトやイオナズン的な)を覚えているが、それしか使えない。
・その爆裂魔法も消費魔力の関係で1日1回しか使えない。
・魔法を使うと、あとは倒れるのみ。(誰かが回収し、背負って帰る必要あり)
・「爆裂魔法しか愛せない」「一日一爆裂」

エントリーNo.2
防御・挑発系スキルのみに割り振り、攻撃が当たらないドM女騎士

・前衛として、敵の攻撃を一手に引き受けるが、それを喜びとする真性のマゾヒスト。
・攻撃は当たらないし、両手剣修練スキルを覚えるつもりもない。
・非常にタフで、ルックスも良いが、己の性癖のためにのみスキルポイントを使っている。
・「モンスターと必死に戦うも力及ばず敗北し、陵辱の限りを尽くされたい」

エントリーNo.3
女神であり僧侶系呪文のマスターでありながら残念知性のプリースト

・正真正銘の女神であるが、お調子者で考えなし。打たれ弱くて泣き虫なかまってちゃん。
・女神ゆえに冒険者としてはすでにカンストしており、低い知力や幸運は上昇する余地はない。
・必要スキルポイントが高いが冒険に直接役には立たない宴会芸スキルを全習得。
・「駄女神」「元なんたら」「狂犬女神」「なんちゃって女神」

頭のネジの緩み具合という意味では、いずれ劣らぬ猛者(もさ)揃い。
だが、彼女らがキャラクターとしてそう見えてしまう理由のひとつとして、冒険者として常軌を逸しているほどにスキルポイントの割り振りが極端であることがあるでしょう。
いわゆる(スキルポイント)を「○○に全振り」キャラばかりということですね。

説明のできる「頭のおかしさ」


彼女らは、単にコメディのできる「頭のネジがおかしいキャラクター」として登場した、ということではありません。
彼女らの「頭のおかしさ」は、作品世界の中でちゃんと筋が通った「頭のおかしさ」だからです。

先ほど、私ならその世界での人生を生きるためのスキル習得に大いに悩むだろう、と書きましたが、おそらくそれが冒険者として普通の考え方だと思います。

それが例えゲーム的な世界であっても、普通はそこで優位に立ち振る舞うことが出来るように、より有益なスキルにポイントを割り振って、キャラクター(自分自身)を成長させていくはずです。

そうしたゲーム攻略的な効率と効果を重視した冒険者像を、標準(常識)として置いた上で、常識はずれの彼女たちがいる。
すなわち。

彼女らはスキルポイントを自分の趣味や性癖に全振りしてしまうような人物

ゲームなら酔狂で済むが、それで本当に生きていかねばならない

冒険者としては、常軌を逸している

頭がおかしい


このような構造となっており、ゲームルール(システム)に則った「頭のおかしさ」になっています。

逆の言い方をすれば、彼女らと直接会って話をしなくても、ステータスや習得スキルが記載された冒険者カード(キャラクターシート)を見るだけで、彼女らの「頭のおかしさ」は説明ができるはずです。
非常に理に適った、スマートな「頭のおかしさ」といえますね。

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※「頭がおかしい」という言葉をこうも集中的に書いたのは初めてのことであり、少し読み返すだけで段々と私自身の「頭のおかしさ」に疑いを持ってしまうが、まだ何とか正常を保っていると思いたいので、文を先に進めることにします。

ポイント全振りキャラクター達が起こす局所的な奇跡


ここまで紹介したように、主人公パーティは極端なステータスと全振りスキルを持った非常に普通の冒険のしづらい(=コメディにしかならない)集団となっています。

コメディ製造機と化した彼らが巻き起こすドタバタが、この作品のメインの楽しさといえるでしょう。

ただ、ここでポイントとなるのは、趣味&性癖の全振りスキルは全く使えないわけではなく、極めて限定的な使い方ですが、時と場合によっては平均的にスキルを上げてる冒険者より、よほど強力な力を発揮するということです。

スキルが偏っているだけで、ポイントは振られているのです。いや、偏っているからこそ特定の領域では通常の冒険者を遥かに凌駕します。コメディするだけの弱者ではありません。

それでも、ピーキーすぎてお前にゃ無理だよ!という扱いが難しい極端なステータス&スキルではあるのですが、これを主人公カズマ作戦立案のもと、メンバーたちが上手く連携することで、絶大な効果を発揮する(ことがある。気がする。ごくまれに)。

人口に膾炙したゲーム的な異世界を舞台にした上で、その世界のルール(システム)に則った、極端なコメディ用のキャラクターメイキングをした愉快な(イカレた)メンバーでパーティを組ませる。
普段は無能または迷惑な存在だけれど、ある限定された状況下で協力しあうことによって、その極端なステータスやスキルがプラスに活きる、という設定は上手いし、とても使いでがあると思う。

もちろんその上で、魅力的なキャラクター表現すなわちキャラクター力(ちから)に尽きる作品だとは思うけれど。

原作小説を読んだことはないけれど、作者の方はかなりクレバーに世界やキャラクターを設定し、使いやすい物語構造を組んでいるのではと感じます。

私は、物語の基本構造や型みたいなところへの興味が大きいので、この作品は魅力的で優秀なテンプレート(褒め言葉)だと評価したいと思います。


この物語構造に、どんなストーリーが乗る(展開される)のかというのはまた別の話です。

世間的には、このストーリー部分で評価の大部分が決められることが多いような気がしますが、私は基本設定(物語の型)だけで充分フィクションとしてすばらしい、と評価してしまいますね。

「設定はいいけど、話が……」ではなくて、「設定がいいので、その時点でフィクションとして優秀」という評価の仕方です。ストーリーの問題はまた別。

自分でも極端だという自覚はありますが、面白い物語の型、優れた物語構造、基本設定に興味の軸足を置くのは、私がフィクションに接する上での基本方針です。
ポイント全振り、とまでは行かないまでも、偏ったポイントの振り方をしてるとは自分でも思います。

例外的なチートキャラクター『あくあっ女神様っ』


ここまで本作品におけるシステムで説明できるキャラクターの「頭のおかしさ」を紹介しました。
ですが、ひとりだけルールやシステムを逸脱した、規格外のキャラクターが存在します。

それはもちろん、人あらぬ身である女神アクア様でございます。

なぜ女神が、異世界の冒険に付き合ってくれるのか、についてはWikipedia:このすばの記述を引用しましょう。

不慮の事故で命を落とした高校生の佐藤和真は、天界で女神アクアに異世界への転移を持ちかけられる。アクアは「異世界には望むものを1つだけ持っていける」と異世界転移の特典を持ち出しながら勧誘するが、アクアの態度があまりにも和真を味噌っかすに馬鹿にしていたために和真は激怒し、アクアを「異世界に持っていく"もの"」として指定する。


女神に何が望みか?と訊かれたときに、女神本人を希望するという、要するに『ああっ女神さまっ』みたいなものです。


もちろん、『このすば』は、汚い螢一と汚いベルダンディーのマリアージュなんですけどね。

ともかく女神アクアは、神すなわちゴッドであるゆえに、冒険者としてはスタート時に成長の余地なくカンスト(レベル99みたいなものか)。
プリースト系の呪文はもちろん、有り余るスキルポイントで近接スキルや宴会芸まで身につける余裕ぶり。
彼女が本気を出せば、魔王も何とかなるのではと思わせるチートキャラクター。

実際にアニメ本編でも主人公カズマが死んだ際に、複数回死んでいるためもう甦れないという世界のルールを、後輩女神を恫喝することによって、ねじ曲げました。

この女神アクアが仲間にいることで、いざというときに世界のルールをねじ曲げた解決策すら物語展開として選択できます。
非常に便利なキャラクターですが、神様だけあって、あまりにも強力すぎるといえます。
プリーストとして、サポート側にまわらせているとはいえ、それでも恐ろしく強い。

強すぎるキャラクターは通常、ストーリーを進めるにあたって邪魔に(都合が悪い)なってしまうことも多く、いっそ退場させるか、さもなくば力が思うように振るえないよう強力な枷でもつけないと、レギュラーキャラとしては使いづらい。

例えば簡単に思いつくのは「神の力が封印された、または制限された」あたりでしょうか。
普段は本来の力の何分の一しか出せず、卍解もできないことにして、ここぞという場面で制限が解除されることにする。
システマチックで分かりやすく、オンラインRPG的なこの世界にも合っているような気がします。

ですがこの作品において、女神アクアには何の制限もかかっておらず、神のごとき能力をそのまま使うことが出来ます。
しかし、ある制約により、女神の力はデウス・エクス・マキナとはなっていません。

では『このすば』における女神の制約とはなにか。

それは、女神アクアがバ……いや頭のネジが少々お緩みになっていることに他なりません。
つまり、もう成長する余地のない、悲しいほど低い知力ステータス。
それに加えて怠惰で脳天気で、ちやほやされて甘やかされたい、お調子者の泣き虫のかまってちゃん。
結局、先に説明した「イカれ気分のロックロール頭」であることに、すべては集約されるわけです。
ほかに、なんにもいらないね。作者はしたたかだね。

恐ろしく強大な力。それを使えば絶対的な神にも悪魔にもなれる。
だがゆるい頭ではどちらにもなれず、考え無しで力を使って莫大な借金をこさえるぐらいが関の山。

『このすば』は、この世界のシステム(ルール)にきちんと則ったコメディパーティのお話です。
にも関わらず、そのシステムを壊せるぐらいのチートキャラ、女神アクアにはなんの制限も課さず、ただただ彼女の残念なパーソナリティだけでバランスを取っているのが面白いと感じました。
核兵器の発射リモコンをネコに預けているようなものというか。

「力を制限された女神」と「何も制限されていないがとにかく駄女神」というのは、物語に与えることができる力の大きさはは似ているかも知れませんが、キャラクターとしては全く似て非なるものです。
このあたりのコントロールとキャラクターの立て方が興味深いですね。





実はTwitterで雪駄さん(@H926)さんの億泰ツイートを見て、この一連の『このすば』話は思いついたのでした。

大きなる力には大いなる制限がともなう。
ただし、その制限は分かりやすく目に見えるものとは限らない。

『このすば』はアニメ二期決定しているということで、あの素晴らしい異世界をもう一度(あのすば)。ということになったようです。期待しましょう。よりひどい内容を。




あとがき および今後の予定など


以上で本文は終わっていますので、以下はあとがきというか雑文です。

久しぶりの記事どうしようかな、ということで、Twitterからゲーム関係のツイートを拾い集め、それで1つ記事をつくろうかなと考えたんですが、やってみると小ネタばかりですが数がそこそこありましたので、ひとつずつ短めのテキストを書くことにしました。
実際やってみると、内容は何も増えてないのに、テキスト分量だけ3倍ぐらいになっています。

増えたのは、『このすば』を知らない人たち向けへの丁寧な紹介部分だったりするので、ツイートより濃度が3倍ぐらい薄まったとも言えるんですよね。
だから私はいつもツイートベースに記事書くときは、見かけのテキスト分量ではなく、内容的にも価値が増えるようにしてるんですが、今回は意図的にやめました。なぜって? とりあえず早く更新だけしておきたかったので。
私はサボってるだけで、ブログ更新を意図的に休止してるわけではありませんからね。
そう思われても仕方ない更新間隔ですけどね。

とりあえずしばらくは、拾い集めたゲーム系ツイートで、短めテキスト、短い更新間隔でなんとかしたいと思っています。
『パトレイバー』のシリーズ記事もそういって始めたんですよね……。あれの続きも書きます。
もちろん、当ブログのメインコンテンツともいえる富野アニメの記事もネタがないわけじゃないから何か書きます。

荒木哲郎監督の『甲鉄城のカバネリ』は、録画してあるけど全く見ていません。
こうして録画地層は、三畳、ジュラ紀、白亜紀と積み重なっていく……。



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