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現実のサッカーにも多大な影響を与えたマンガ『キャプテン翼』。

今回はシンプルに『キャプテン翼』小学生編の構造は実にすばらしい、という話だけをします。


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物語のスタートから、翼、岬、若林らを擁する南葛SCが、読売ランドでの全日本少年サッカー大会で優勝するまでを描くのが「小学生編」です。恐らく最も多くの方の記憶に残っているのは、この小学生編ではないでしょうか。

この小学生編で面白いのは、各キャラクターでの家庭経済格差というものが、きちんと描かれていたことです。

具体的にはまず、若林、三杉、翼あたりを代表とした裕福な家庭のグループ。

特に若林家は絵に描いたようなお金持ちで、お屋敷は大きいし、専用のコーチ(見上さん)まで雇っています。若林が中学で早々にドイツへ旅立てたのは家のサポートも大きかったと思われます。

翼は、さすがに若林ほどのお坊ちゃんではありませんが、外国船の船長をしている父を持ち、アル中おじさん、いやロベルト本郷を居候として養ったり、ブラジル留学を考えている翼の為にポルトガル語の家庭教師をつけてくれる程度には余裕のある家庭です。

もうひとつは、日向に代表される貧しい家庭。 
貧しさという意味では、母子家庭の四人兄弟の長男で、小学生からアルバイトに励む日向に勝てるものはいません。
日向は別格ですが、裕福ではない(庶民)ということなら、ほとんどの家庭がこちらに該当するでしょう。

また、経済に限らないハンデまで含めれば、スポーツしづらい雪国でがんばっている立花兄弟(花輪・秋田)や松山光(ふらの・北海道)もひとつのハンデを背負っているキャラクターと言えるかも知れません。身体的ハンデまで含めれば三杉はこちらにも該当します。

さて、この2つのグループを、

翼・若林・三杉に代表される「裕福なグループ」=「ヨーロッパ」
日向に代表される「貧しい(または)庶民グループ」=「南米」

と見立てたとき、この両者が激突する少年サッカー大会は、FIFAワールドカップに相当します。

つまり実際のワールドカップのように、欧州と南米、経済格差のある二大勢力の戦いの構図です。

日向小次郎 貧しさからのサッカーによる脱出


南米(庶民)グループ代表の日向小次郎。
日向の目的は、貧しい家庭に負担をかけずに、より上のレベルでサッカーを続けること。

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サッカー大会での優勝はその目的の為に必要でしたが、、明和FCは準優勝に終わってしまいます。
しかし東邦学園は決勝戦を見て、勝った翼だけでなく、敗れたまた日向もスカウトに値すると判断します。

これにより日向は、裕福でない環境からより恵まれた環境へ、サッカーによって脱出する、という目的を果たすことができました。

これは、日向=南米(庶民)グループという本稿の見立てでいけば、南米の若くて才能のある選手が、ヨーロッパのサッカークラブにスカウトされるようなもの。
現実のサッカーでも普通に行われていることで、例えばFCバルセロナのリオネル・メッシも若くして、祖国アルゼンチンからスペインへ渡っています。

南米(庶民)グループ=日向もまた、前年度優勝の若林のお坊ちゃん(欧州)に挑戦状を叩きつけたこの大会で、華々しい活躍をし、才能とハングリーさを武器に貧しさからサッカーで脱出する結末となっています。 

ただ重要なのは、重いものを背負っているがゆえに目的重視のサッカーだった日向が、純粋にサッカーをプレーする喜びや楽しさを取り戻したことです。
それには、主人公大空翼の存在が重要になってきます。

大空翼 欧州&南米ハイブリッドのサッカーカウンセラー


前年度優勝の若林(欧州)vs挑戦者の日向(南米)という構図を踏まえた上で、キーポイントになるのが、主人公大空翼です。

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前述のように家庭環境としては、翼は裕福な欧州グループに分類しました。
しかし彼に大きな影響を与えた、サッカーの師が元ブラジル代表のロベルト本郷であることで、いわば翼はヨーロッパと南米のハイブリッド的な存在になっていると考えます。

翼は日向のように、サッカーを続けるための家庭的ハンデも、三杉のような身体的ハンデもなく、何もコンプレックスを背負ってはいません。
ただ、ひたすらにサッカーというスポーツを楽しむ(ことができる)ように設定された存在です。
そこへロベルトノートの記述にもある通り、「自由」を重んじる南米的なロベルト本郷の教えが加わり、欧州・南米両面の要素を併せ持ったキャラクターとなっています。

結果、翼こそがサッカーの楽しさを1点の曇りなく表現できるキャラクターとして、この作品に君臨します。
彼が、サッカーカウンセラーとして一緒に戦った選手たちの(精神的な)問題を解決していくことが出来るのは、このハイブリッドなキャラクター設定あってこそでしょう。
サッカーがいちばん上手いからではなく、だからこそ大空翼は『キャプテン翼』という作品の主人公なのです。

岬太郎 誰とでも友人になれる移民系サッカー選手


そしてもう一人のキーとなるのは、貧しい日向とも、裕福な翼や若林とも、誰とでも友達になれる男。……そう、ボクは岬太郎。

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岬は、父子家庭であり、放浪画家の父との転校続きの少年時代と、経済的にも豊かには見えない生活からすると、苦労人の日向(南米)グループと言えるでしょう。

しかし岬は自らの境遇を悲しむことなく、抜群のサッカーセンスと人当たりの良さでグループを横断して、どこでも友人を作りサッカーが出来るキャラクターとなっています。

本稿の文脈で岬太郎を例えるなら、彼は「移民系のサッカー選手」ということになるでしょう。

自分のルーツとは関係なく、今いる場所でどこでもサッカーによってつながることが出来る選手。

例えば、岬と縁が深いフランスでいえば、ジネディーヌ・ジダンがアルジェリアにルーツを持つ移民出身でありながら、フランス代表で活躍をしたのが有名ですね。
こうした選手は数多く、岬=移民系サッカー選手という見立てもまた、サッカーでの現実とシンクロするものになっています。

主人公らしくヨーロッパと南米のハイブリッド的な性格を持ち合わせている翼と、世界のどこでもサッカーが出来る移民的な性格を持ち合わせている岬が、「ゴールデンコンビ」として作中最強のコンビネーションを誇るのは、今回の文脈からいけば自然であり必然といえましょう。

決勝戦 合法的な主人公チームの敗北


ここまで説明したように、現実のサッカー世界の縮図のようなキャラクター達が集まった全日本少年サッカー大会。

その大会システムもまた、予選リーグ→決勝トーナメントと、現実のワールドカップと同じものとなっています。(実際の全日本少年サッカー大会も、このシステムであるようです)

この大会システムは、擬似的なワールドカップとなると同時に、週刊少年ジャンプのスポーツ漫画として素晴らしい展開を実現しました。
ちょっと振り返ってみましょう。

翼擁する南葛は、日向の明和と予選グループにおいて同組となり、対戦の結果、南葛は敗れます。
予選1位:明和、予選2位:南葛で決勝トーナメントに進むことは出来ましたが、予選リーグで1位と2位になったチームは決勝トーナメントでは別のブロックに配置されます。

つまりリベンジの機会は、この両チームが決勝戦まで勝ち上がらないと実現されません。
逆に言えば、この大会システムであれば、予選で負けたことがあるチームが優勝することも可能です。無敗のまま、優勝しなくても良いのです。

個人的には、2010 FIFAワールドカップ(南アフリカ大会)において、スペインが予選リーグ初戦でいきなり負けながら、その後勝ち上がって、初優勝を果たしたのを思い出します。(決勝の相手は予選で敗北した国ではないですが)

『キャプテン翼』この大会システムをフル活用しています。

(1) 同じチームとの対戦を、同大会で二回作ることができる。
(2) ライバルチームに一度敗北させながらも、決勝まで進ませることができる。
(3) 二度目の舞台を必然的に決勝戦に設定でき、リベンジ=優勝させることができる。


特に、ジャンプマンガであるにも関わらず、この大会システムによって極めて「合法的」に、主人公チームの敗北を組み込むことができたのは、物語展開の自由度としてかなり大きな意義があったのではと考えています。

例えば、野球における夏の甲子園優勝の物語ですと、予選・本大会を通じて無敗で通すしかありません。(敗北のエピソードは、事前の練習試合などで扱うしかない)

『キャプテン翼』小学生編は、こうして一度予選で敗北した南葛が、決勝戦でリベンジを果たして優勝します。

では、これは日向=南米(庶民)グループの敗北なのかといえば、そうではなく、決勝で翼と戦うことでサッカーカウンセリングを受けた日向は、さまざまな大事なことに気づき、その結果、東邦学園の特待生として、家庭に負担をかけずにサッカーを続けるチャンスを掴みます。

決勝戦の勝敗は、絶対的なものでもなければ、最終的なものでもありません。
彼ら全員のサッカー人生が続いていく、その未来の方が重要です。この先の方が長いのです。

現実のサッカーがワールドカップのあとも続いていくように、彼らのサッカーもこの後、中学生編、ワールドユース編、さらにその先へと続いていきます。

そしてその中心には、欧州と南米のハイブリッドであり、サッカーの自由と楽しさを表現するキャラクター、主人公大空翼がいるのです。


どこまでかというのは不明ですが、『キャプテン翼』小学生で見られるサッカー世界の縮図は、高橋先生が意図してデザインしたものではないかと思っています。日本のプロリーグも、ワールドカップ出場も無かった何十年も前に、と考えると、すばらしいですね。

仮にこれが意図的でなかったとしても、作品は実際にそういう構図になっていますから、すばらしい事には変わりありません。


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おまけ。「ある日の明和FC」


明和FCのタケシ達は、当時、日向さんに結構気を使っていたのではないか。

若島津「いいかみんな。もうすぐキャプテンが練習に来るが、日向さんの前でドラクエ2とビックリマンの話はするなよ」
タケシ「そうですね。ヘラクライストだとか、ロンダルキアだとか……」
日向「ヘラク? ロンダル? ……なんだって?」

いつの間にか、練習場に来ていた日向。

タケシ「う、うわああああああああ! 日向さん!」
日向「ようタケシ。みんな練習してるか? で、ロンダ……何とかはどこのサッカー選手だ?」

タケシ「……イ、イタリアです」

<おわり>

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あとがき


本稿の流れでは主人公翼を、無敵のサッカーカウンセラーと位置づけましたが、そのために主人公にサッカーを楽しむ上でノイズになるような背景を与えず、コンプレックスなしの100%サッカーバカとなっていますので、ある種の狂気を感じないこともないですけどね。

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『キャプテン翼』については、過去記事でも扱っていますので、もし宜しければ御覧ください。

基準(物差し)となるキャラクターから考える物語<『スラムダンク』『キャプテン翼』『機動戦士ガンダム』のパワーバランスとキャラクターの格>


今回は、本来準備していた記事が想定より時間がかかる事が判明した時、ひとまずつなぎに更新はしたい、ということで、Twitterでのツイートをベースに最小限の手間で、記事を仕立てました。

経験上、ツイートをベースにしても書き出すと長文にしてしまうので、今回はとにかくひとつの話だけにして膨らませたり、脱線したりしないように気をつけました。(おかげでいつものような、おふざげ要素も少ない=見やすい)

そのため本ブログ愛読者には、今回のようなあっさり風味の記事では物足りなかったかも知れませんが、多分普通のブログ記事ってこんな感じのバランスなのだと思います。
ただ一部マニアの為に、翼の自室のような安心感を感じる記事も用意しますので、お待ち下さい。


ではまた次回の記事にキックオフ!(アニメ『キャプテン翼』次回予告風)





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